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ほえぶる!

ファンタジーやら現代もののエンタメ小説やら紀行文やら書いてます。自転車にも乗る。「文藝サークル~綴~」の中の人、「おにこくらぶ」の中の人、「ドジョウ街道宿場町」の中の人です。


 懐かしい夢を見た。
 というか、好きな人の夢を見た。
 たぶん普通の人だったら、そんな夢をしょっちゅう見るのだろうけど。
 でも、オレは実に四ヶ月ぶりにその夢を見た。
 オレにとっては待ちに待った夢だった。
 そいつとは冬の数週間を共に暮らしてきたけど、春の陽気みたいな性格で、あいつの笑顔を見れば、どんなことだってやわらかく包んでしまう。
 少し天然で、世間知らずだったけど、そこが可愛らしかった。
 デートみたいなものもした。生まれて初めて告白をした。
 でも、もう彼女と会えるのは夢の世界でしかない。
 彼女は遠い遠い世界に行ってしまった。どんなに足掻いたところで、彼女の世界には一歩たりとも近付けない。オレたちの世界が歩けば、彼女たちの世界も同じ速さで歩いていってしまう。
 彼女もまた、オレのことが好きだった。そんなこと、既に忘れてしまっているのだろうけど。
 未練はたくさんある。
 一緒に色んなところに遊びに行きたかった。もっとたくさんの友達を作ってもらいたかった。
 でも、彼女は少しばかり変わり者だった。
 背中に翼を付けていた。
 ただそれだけの理由で、たくさんの未練を残してしまったわけだ。
 後悔してもしきれない。
 いつまでも一緒にいたかった。
 一緒にいるだけで幸せだったんだと、今なら思える。
 ソフィア……。
 あいつの名を呼びたくなったが、喉から出かけたところで押し留めた。この世界はオレのわがままに構ってくれるほどの余裕がないことを知っていたからだ。
 無常にも時だけが過ぎ去ってゆく。
 おや……。
 携帯のアラームがぼんやりと聞こえる。
 どうやら、そろそろ起きる時間みたいだ。
 でも、目を覚ましたところで、大好きなあいつが隣で眠っているわけでもない。
 そう。
 翼の生えた少女はもういない。
 俺は重い瞼をゆっくりと開いた。


第一話『まるで昨日の話のように――。』に続く

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