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ほえぶる!

ファンタジーやら現代もののエンタメ小説やら紀行文やら書いてます。自転車にも乗る。「文藝サークル~綴~」の中の人、「おにこくらぶ」の中の人、「ドジョウ街道宿場町」の中の人です。



 そうだな、読書の邪魔したら悪いだろうな。結構分厚い本だし、集中して読んでるし。
 カバンを机の上に置き、椅子を引く。
 どさん! ぎぎ……。
「…………っ!」
 前の席の少女はビクリと肩を震わせた。そして、ほとんど反射的にオレの方を見る。
 その瞳には、驚きというか恐怖というか、いつからそこにいたんですかオーラを発している。ドア開ける音で気付けよ。
 どうやら完全に警戒されている。待て、オレはそんな危険人物じゃない。確かに挨拶しなかったのは悪いと思う。つーかこんなに警戒されてるのは挨拶しなかったせいだ。間違いない。オレの当たらない勘が働く。
 なら、今からでも遅くはない。
「よ、よお」
 ガタリ、と椅子が動く音がした。オレが座ろうとしたのではない。文学少女が思いきり立ち上がったのだ。身長は俺の胸辺りまでしかなく、イマイチ立ち上がっても存在の薄さは変わらない。それからくりくりとした目でキョロキョロと辺りを見渡す。何かを見つけたのか、少女は教壇に駆け寄った。そして、木製の教卓に身を潜め、顔半分だけを出してオレをじっと見つめている。ああ、そうだよ、挨拶は逆効果でしたよ。悪かったな、勘が当たらなくて。
 オレは椅子に手を掛けたまま固まった。道端で野良猫と出くわし、そのまま睨みあっているような気がする。
 えっと……オレはどうすればいいんだ? やっぱり挨拶せずに座った方が良かったのか? いやいやでもでも、挨拶せずに座っても結果は変わらなかったような気がする。ってか、どうして挨拶しただけでこんなに怖がられなきゃいけないんだよ。オレの顔ってそんなに怖い能面を被った男に見えるのか? まあ、確かにいつも詰まらなそうでイラついてる顔をしているとは言われるが……。
 ……バカバカしい。第一なんでオレはこんなことをしてるんだよ。何をしたっていうんだ。ただ軽い挨拶をしただけのはずだ。なら、オレの務めは終わった。冷静に考えてあとは自分の椅子に座ればいい。
 溜息が湧き出たので、それを合図に席に座った。腰と尻に固い感触。ようやく落ち着けた。尻目で教卓の少女を見ると、彼女はまだオレの方を見ているのが分かる。
 謎の沈黙。謎の視線がオレに向けられる。そして、徐々にやってくる謎の睡魔。
 なぜ睡魔がやってきたかと言うと、変に緊張していたからだ。無理もない、あわあわとオレを見るそいつは、なんというか、とても愛くるしい。こいつなら絶対に擬人化ならぬ擬猫化や擬ハムスター化が成り立つ。そのくらい行動がちょこまかとしていて、目が大きく透き通っている。なんと言っても癒しオーラを放出しまくっていて、そんな奴に見つめられたら普通一般男子ならイチコロだ。
 どうしてオレがイチコロされなかったのかというと、簡単な話、イチコロされないように耐えていたからだ。
 だから、余計な精神をすり減らしてしまった。よって、疲れて眠くなった。Q.E.D.
 ……どこまで謎の睡魔を追い求めてるんだよ、オレは。
 奏といたときまで目が覚めていたのに、一気に眠くなってしまった。
 まだホームルームまで時間があるし、寝てしまおう。そうと決まれば居眠りだ居眠り! なんて、半ばテンションの高いオレは朝っぱらからの居眠りを開始したのであった。


第二話『起死回生ともいう。』に続く

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