ほえぶる!

ファンタジーやら現代もののエンタメ小説やら紀行文やら書いてます。自転車にも乗る。「文藝サークル~綴~」の中の人、「おにこくらぶ」の中の人、「ドジョウ街道宿場町」の中の人です。

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 ネット上で議論をしている人をよく見かける。議題はさまざまあるけど、大抵ヒートアップしていくと相手を潰しにかかったり罵ったり、挙句には人格を否定するという反則技を使ってくる輩も現れたりする。ハッキリ言って無残。目も当てられない。もはや議論なんて呼べない。口げんかだ。小学生の兄弟ゲンカのほうがまだ見ごたえがある。
 なぜネット上でケンカが勃発するのか……。
それは顔も知らない人同士が、文面上でコミュニケーションを取るからなのだと思っていた。2ちゃんねるでは毎日何件ものスレで、>>1とその他諸々が争うし、ツイッターでは極論思想を抱く人が正反対の極論思想を抱くアカウントへ突撃し、炎上させる。まあ、よくある話だ。よくある話だからこそ僕は特に気にしてなかったし、単純に「議論」ではなく「口ゲンカ」であり「罵り合い」なんだと思っていた。顔を知らない人だから。文面上だから。
 でも、僕の考えは違った。
 文面云々とかお互い顔を知っている云々とかまったく関係なく、議論することができない人間が多すぎるのだ!
 というよりも、話し合う、ということを根本的に間違っておきながら、その間違いに気付かないまま相手にケンカを吹っ掛けている。

 議論とは何か。
 話し合うとは何か。
 誰かにとっての「意味」を覆すことほど難しいものはないと思うけども、僕は僕なりの考えを提示したい。

 結論を言ってしまえば、議論とは、話し合うとは「相手の話をよく理解し合う」以上に表す言葉はない。
 というのも、話がこじれてしまう最大の原因は「相手の話を理解しようとしない」からだ。
 それではなぜ議論する人たちは相手の話を理解しようとしないのだろうか。

 答えは簡単。
 彼らは聞くことよりもまず自分の言い分を通したいからだ。言い分を通すのであれば、相手の意見なんて聞く必要もなく、相手に納得をさせるためにあらゆる手段を使う。例えば法や道徳など、共有することができる決まりごとを挙げたり、歴史上の偉人や専門家の意見や海外の事例を引用することで説得力をつけたり、話をドラマチックに仕立て上げることで情に訴えたりする。そうすることで揺るぎないものにする。
 確かにそれは弁論の術であり、裏打ちされた言葉は人の心を打つ。だが双方が話し上手でも、議論では延々と平行線を辿ることが多い。話し合いとは双方的なコミュニケーションであるため、一方が話すのであれば、もう一方はしっかりと聞いていなければならない。だが「聞く」という行為は、簡単なようで、実はとても難しい。

 「話す」という行為と「聞く」という行為とで、根本的に違う点がある。それは、話すことは「話そう」という意志がなければ話せないのに対し、聞くことは「聞こう」と思おうと思わなかろうと、勝手に言葉は耳に入る点だ。
 だからなのか、最近の授業では「話す」ことに重点が置かれている。英語コミュニケーションの授業では、話す姿勢が第一に評価される。自分で調べたものをプレゼンテーションという形で発表する授業も増えている。自分の考えを表明する。伝える。それは社会に進出する上では必要不可欠な能力であり、それを養うことに異論を唱えるつもりはない。ただ、「話す」ことの重みが増していくにつれて、「聞く」ことの重要さを人々は忘れているのではないか。

 聞くのは、特に特訓をしなくても聞ける。当然だ。人は無意識的に話を聞き、自分なりに解釈して呑みこみ、自分の考えを述べる。それができればある程度のコミュニケーションは行える。相手の話をすべて聞かなくても、断片を拾って、そこから話を膨らませれば雑談は成立する。相手の話を聞いて、よく分からなければ、それっぽい自分の話をすれば、とりあえず会話は途切れずに続く。
 こういった経験は誰しも経験したことがあるだろう。耳は必要最低限傾けるだけだ。それで日々は成り立ってしまう。
 ためしに、雑談中相手の言葉を一字一句洩らさず耳を傾け、さらに言葉の裏も理解しようと努めてみるとどうか。きっと十秒もしないうちに追いつけなくなって、すっとばしてしまうだろう。
 実は、聞くことは頭をフルに使う、労力のいる行為なのである。
 英語のリスニング問題を解くコツは聞きとばすことだ。我々は会話を聞きとばし、会話の表面をさらって内容を理解することが、聞くことなのだと教育されてきた。
 それでは聞きとばしてしまうものに意味がないだろうか。
 そんなはずはない。教育によって(というよりも、生きる上で)軽視されてきた言葉の細部には、僕らの知り得ないその人の考えが埋まっているのである。
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