ほえぶる!

ファンタジーやら現代もののエンタメ小説やら紀行文やら書いてます。自転車にも乗る。「文藝サークル~綴~」の中の人、「おにこくらぶ」の中の人、「ドジョウ街道宿場町」の中の人です。

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第 二 部  告 知

第一部最終回へ


 きです。

  ああ。


 ――それは、
  ――
.一瞬の出来事だった。


 で、付き合い始めたってワケか。

  ああ。


 後悔していないと言ったらウソになる。
 こんな簡単に承諾してしまっていいものなのだろうか、と。
 もしも、浅はかだったせいで彼女を傷付けてしまったならば、オレはどうすればいいのだろう?
 悔み、苦しみ、不安……。


 ――だが、

  ~例え一瞬だとしても、
      新たな一歩だということに変わりはない~



『おめでとう』

『いやあ、おめでとう』

『しっかし、まさか本当に付き合いだすとはねえ』


 ――祝福してくれる。

   ――始まっているのか。

     ――新たな日々はもう。




 これで、いいんだよな。



『アンタ、付き合うんだって? おめでとう、統流』




 ――本当に、
    ――これでよかったのか?






 全ては、不安からだった。


             『お前、最低な奴だな』
               ――お前にそう言われるとは思わなかった。


       不安から逃れるために。


   『保健室行ってるって、言っとく……多分』
      ――うちの担任のことだ、なんの疑問も抱くまい。


             何もかもを傷付けてゆく。


                『僕は、許さない』
                   ――こいつは、本気で言っている。

                  失わなかったものなど、あるのだろうか?

『統流君っ!』
 ――ドクン。




                         ただ――、



『……バカ』


     ――何かを求めて、
           オレは探し続けた。




 見つかることなどないとわかっていながら。




 翼の生えた少女はもういない。
           第二部『迷境(仮)』

                      二〇一〇年春連載開始予定
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翼の生えた少女はもういない。
著 城ヶ崎ユウキ

目次

・前置き翼の生えた少女はもういない。

・第一部『不安』
  第一話『まるで昨日の話のように――。
  第二話『『起死回生ともいう。
  第三話『『新しい日常の昼下がり 前篇
  第四話『新しい日常の昼下がり 後編
  第五話『田舎来い草案提出締切日』 11/12段落微修正
  第六話『渡る風
  第七話『入相
  第八話『白いきれと箱
  第九話『今起きた、すぐ行く、畜生。
  第十話『源流の泉
  第十一話『その後~泉の続きへ~
  第十二話『境界
  第十三話『大家さんグッジョブ
  第十四話『拠り所を探して
  第十五話『ケツイノカタチ
  第十六話『Die Welten die Vergangenheit
  第十七話『翁の瞳の奥底に眠る其方
  第十八話『水辺の夕陽
  第十九話『不安
         Read More...『KEEP』

・第ニ部『迷境(仮)』
・第三部『深紅(仮)』
・末文『???』

   『城ヶ崎の小説ども』に戻る。

 それから幾日かが経った。
 いずみは、耳打ちなしでも話ができるようになってきた。たまに顔を赤らめて白渚の背中に隠れることもあるけどな。大瀬崎と初めて会話が成立したとき、大瀬崎は嬉しさのあまり大室に抱きつこうとしたときもあったな。ま、あと少しのところで白渚が介入し、最終的に大瀬崎は白渚に抱きつく形となったのは笑えた。だがこのシチュエーション、一部を除いて誰も喜ばないぞ……。
 久しぶりに朝早くに登校すると、やはり大室はすでに来ていた。今日は読書ではなく勉強をしている。そういや英語の小テストがあったんだっけか。そのせいか、オレの前席の男子や、大室の隣席の女子や他数人が席に座って小気味よいシャーペンの音を立てている。最近授業に付いていくのでやっとだからな、オレもやるとするか。
 カバンから筆記用具と単語帳を取り出す。今日のテスト範囲は……おや、三十ページもあるぞ。よし、諦めよう。
 出したばかりの勉強道具を全てカバンに詰め、またいつものように机に伏せる。寝やすいフォームをあれこれ試した。
 右腕を伸ばし、その二の腕にコメカミを置き、左手でデコを軽く支える姿勢に決めたところで、何かが落ちる音がした。もう筆箱も何も出してないし、オレとは無関係の奴がシャーペンか何かを落したんだろう。オレは構わず眠ることにする。
「……あ、ありがとう」
 朦朧とする意識の中で、大室の声が聞こえた。小さくても、静かな教室ではよく聞こえる。
「いえいえ、どういたしまして」
 とりわけ明るい声が返事をした。
「わぁ、大室さんの声、初めてだよ!」
「そ、そう……かな?」
「そうだよ!」
 元気良く、ぶんぶんと頭を縦に振ってるんだろうな、声の主は。
「あの、実は私、ずっと大室さんと話したかったんだ!」
「え……?」
「なのに、話しかけようとするといっつも怖そうな男子が来るんだもん」
 あとで大瀬崎の奴をいじり倒してやるから安心しろ、二人。
「私、見て見ぬふりしかできなくて……。ごめんね」
 大瀬崎、お前クラスの評判悪いみたいだぞ。いや、待てよ? 怖そうな男子ってオレも入ってるかもしれないよな? 遠目で見てるよう心掛けたつもりなんだが。
「スルガくん、怖い人なんかじゃないよ……多分」
「え? そうなの? っていうか、知り合い?」
「……かも。スルガくん、不器用だけど……こんなわたしなんかと仲良くなろうって頑張ってた……と思うの」
 頑張りが伝わってたってことは、ある意味『田舎来い』は成功したのかもしれないな。
「いきなり大声出されたりとか、触られたりとかされると怖いけど……とってもやさしいと思う、かも」
 いい印象を持っているのか、はたまた変態という印象を持っているのか、これだけだと判断しがたい。個人的には後者の方が面白そうだからそっちを希望するが。
「へえー。人って見かけによらないんだね。じゃ、私もスルガ君みたいに、大室さんと仲良くなりたいな!」
「え……っ」
 大室の声が震える。きっと全身固まってるな。
「あ、大丈夫大丈夫。スルガ君みたいな酷いことはしないって。ただ、一緒にいろんなこと話したり、一緒に勉強したり、一緒に遊んだりしたいなって思ったんだ」
「こんな……わたし、なんかと?」
 大室の声色からして、緊張している。
「『こんな』じゃないよ。『なんか』でもないよ。大室さんだから仲良くなりたいの!」
 寝る体制を変えた。きっと、この子は伊東や奏のように思いやりがあるいい友達になるだろう。安心して眠れる。
「だってさ、こんなにモキュモキュ可愛い子、ほっとけないもん!」
 そして、奴もまた、大瀬崎に類する何かを持っていた……。つーか、なんだよモキュモキュって。
「そ、そんな、わたし、かわいくなんてないと思う、かも」
「大室さんは可愛いって! はうぅっ、抱き締めたいよう!」
 そう悶えた一秒後、大室が小さな悲鳴を上げていた。でも、その悲鳴はどこか嬉しそうで、安堵のようなものが混じっているような感じがした。
 結局、友達になるキッカケなんてなんでもいいんだろう。奏のときだってそうだった。そりゃ、オレと大瀬崎が知り合ったときのキッカケみたいに、それから人物像が固められることがある。その点に注目すれば肝心なのかもしれない。だがキッカケなんてものは所詮キッカケに過ぎず、親しくなるうちに忘れていくものなんだろうな。
 にしても、一瞬なんだな、友達になるっていうのは。


 その日の放課後、いつものように帰り支度をしていると、大室に呼び止められた。
「あの、トベルくん。ちょっと……いいかな?」
「ん? いいけどどうした?」
「俺は用無しなんすか?」
 隣の大瀬崎の嘆きに、大室はこくんと頷いた。
「いずみちゃあん、今日も可愛いっすよお!」
 いや、今更媚売っても意味ないぞ。大室も首をふるふると横に振ってるし。
「トベルくん、少しだけ残ってもらって、いい……かも?」
 途方に暮れながら帰宅する大瀬崎を尻目に大室は小首を傾げた。
「そのくらいはいいけど、どうしてだよ」
「ひみつ……かも」
 大室はやや頬を赤くして、手をモジモジとさせた。ま、大室がオレを呼び止めるってことは、大事な用事なんだろうな。オレは了承した。クラスメイトがいなくなるまでまで、オレたちはなんとなく机に腰を掛けて待っていた。そのうち白渚が来るんだろうなあ、なんてことを呟くと、オレとの話が終わるまで来ない約束をしていると返してきた。よほど個人的な話なのだろうか。
 なんて思っていたら、教室に誰かが入ってきた。
「……なんでアンタがいるのよ」
 奏だった。大きな溜息を吐くが、オレだって吐きたい。
「こっちのセリフだ。今から用事があるんだよ」
「それこそこっちの台詞よ。私はいずみに用があって来たの」
「オレだって大室に用があるんだ」
「と、トベルくん、ミコちゃん! 落ち着いてほしい……と思うの!」
 オレたち特有のよくわからない展開に、大室が割り込んできた。
「えっと、二人に用事があって、その……かも」
 大室はうまく説明することができず、言葉をすぼめる。少しかわいそうになってきた。
「いや、悪い。わかってた」
「ごめんね、このバカ統流が悪乗りしちゃって」
「それはお前だろ」
「何言ってんのよ! アンタからだったでしょ?」
「そうか? 奏からじゃなかったか?」
 また言い争いが始まった。また大室が困りだすが、すでに決着は着いていた。オレが奏に口論を持ち込んだところでオレの負けだからだ。
 数分後、ようやく収まり、本題に移る。
「えと……二人とも、いつも、ありがと……かも」
 大室からの感謝から始まった。
「わざわざお礼をするほどのことしてねえぞ?」
「それなら吉佐美にしてあげてほしいわね。私はなんにもしてないんだから」
 オレたちは大室といるのが楽しいからいつも大室といるだけだ。だからお礼なんていらない。オレとしては、自身から「ありがとう」と言いたい程なんだから。
 大室は照れ笑いを浮かべ、小さく頷いた。
 それから、しばらく無言の時が続いた。
 野球グラウンドから野球部のかけ声が聞こえる。ボロっちいグラウンドだからか、その怒りを声にして発散させているようにも思える。
「って、それで終わりかよっ!」
 思わず突っ込んでしまう。相手が大室だからといって突っ込みに加減をするつもりはない。
「ち、違うかも! これは前置きかも! 前座なのかもっ!」
 必死に解説する大室がとても健気でかわいらしい。奏がオレを睨んでいる。からかうのはもうよしたほうがいいのかもしれないな。
「えっと……わたしが言いたかったのはね、トベルくんの『夢』の話なの、かも」
 夢? ゆめ……。ああ、あれか、バスケの試合中に大室と話したときにほんのちょっとだけ触れた。
「同じ世界の夢ばかり見るってやつだったか? よく覚えてたな」
「統流、そんな夢見てたの?」
 隣の奏がやけに心配そうにしている。
「まあな。でも別に気にしないでいいぞ」
「バカッ! 夢によっては悪い病気の予兆だったりするのよ!」
 んな話聞いたことないぞ。まあ、あり得る話なのかもしれないが。
「ミコちゃん、えと、トベルくんは大丈夫……かも。その夢を見るのは、トベルくんが特別な存在だから……だと思うから」
 特別な存在……。どこかで聞いたことのあるフレーズだ。
「で、なんでいずみがそんなこと言えるのよ」
「わたしのね、とっても古い友達から聞いたことがあるの」
 ミナトのことか。きっともう会えない、大室の最初にできた友達だ。
「あ……そう。で、統流の夢の話に、どうして私が必要なのかしら?」
 予想だにしない話題で、奏はなんだか居場所が悪そうだった。
「この話は、ミコちゃんも……ミコちゃんだからこそ聞いておいたほうがいいから……かも」
 大室は、オレと奏を交互に見、そして顔を赤くする。
「ばっ……バカ!」
 なぜか奏も顔を赤くした。っていうか、何に否定してんだよ。
 いずみが小さな空咳をして話を戻した。
「トベルくんの見る夢はね、束縛されてしまった、遠い遠い未来の世界なのかもって、思ったの」
「束縛? どういう意味だ?」
 じゃあ、普通の世界は束縛されてない世界ってことなのか? そもそも束縛された世界ってどんな世界だ? ワケわからんぞ。
「例えば……ええと、トベルくん、手を挙げてもらえる……かな?」
 手を挙げる? どうしてそんなことしなくちゃいけないんだよ。それだけで束縛された未来の世界ってのを説明できるっていうのか? 土台、現在にいるオレたちなんかから未来のことを知るなんて不可能だ。
 さあ、それでも手を挙げるのか、オレ?

●渋々手を挙げる。
○手を挙げたところで説明できるわけがない。



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 それなら、見せてもらおうじゃないか。束縛された世界ってのはどんな世界なのかを。
「ほらよ。これでわかるのか?」
 渋々手を挙げた。
 こくり、と大室は頷いた。まさか、そんなはずがない。
「このときね、トベルくんには大きく分けて二つの可能性があった……はずなの。手を挙げるか、またはその逆か」
 まあ、そうなるだろうな。オレだってどっちにしようか迷ってたんだからな。
「さらに細かく言うとね、手を挙げるにも、すぐにぱっと挙げるのか、嫌々挙げるのか、右手か左手か……。いろんな可能性が組み合わされば、これだけでとってもたくさんの可能性がある……と思うの」
 なんだ? 何を言ってるんだ? 大室は手の挙げ方が何通りあるのかを身振り手振りで説明している。確かにオレは渋々と右手を挙げた。無意識だったから左手を挙げた可能性もある。
「でも、すぐに手を挙げるつもりはなかったぞ?」
「もしも……わたしが『手を挙げて』って言ったときに嫌々手を挙げる考えを持たず、すぐにでも手を挙げようと思ったとしたらどう……かな?」
 つまり、こういう考えを持っていたらどうだ? という話らしい。
『「例えば……ええと、トベルくん、手を挙げてもらえる……かな?」
 手を挙げる? ほほう、それで束縛された世界が説明できるのか。それは是非とも気になるところだな。よし、手を挙げよう』
 もしオレがそう思ったとしたならば、確かにすぐに手を挙げた可能性はある。
「もしも、の世界は必ず別の世界で実現しているの」
 ほう、それじゃあ正直者のオレっていうのも別世界にはいるっていうのか。笑えるな。別に大室のことを信じていないわけではないが、皮肉的になってしまうのはオレの思っている以上に事が壮大だからなのだろう。
「それで、統流の見る夢とそれはどう関係があるのかしら?」
 奏は興味を持っているようだ。そういや、奏はタイムマシンの調査をしてるんだっけか?
「今のは、可能性を簡単に説明した前座……かも。今この瞬間でも、この世界には可能性で満ち溢れてると思うの。でも、トベルくんの見る世界に可能性はない……のかも。可能性を束縛された世界がトベルくんの夢、なのかもしれない」
 つまり、右手を挙げることしか許されない世界なのか。
 それって、悲しいことだと思う。可能性に満ちた世界の話を聞いたばかりのオレが言ってはバカの一つ覚え的なものを感じるのだが、でも縛られた世界に楽しいことなんてないような気がした。
「トベルくんが同じ夢を見るのは、きっと予知夢の一種……かも。予知夢は、無限大の可能性のうちの、ある一つの可能性を示唆してくれているの。占いもそれに近い……かな? トベルくんの場合は、身近な未来じゃなくて、遠い未来の予知夢を見ているかもなの。でも、その世界に可能性はないから、いっつも同じ夢を見てしまう……のかも」
 待て、混乱しそうだ。予知夢ってのはつまり……ん? もしそうなると意識が少しの間タイムスリップしてることになるな。そんなことが可能なのか? 誰もが予知夢をしているっていうのならこの説を疑っていたが、予知夢なんてする人そうそういないし、そもそもこの話を大室に聞かせたのはあのミナトだ。会ったことはないが、大室の語りから察するに、本気で真実を知っている。能ある鷹は爪を隠すという表現があっているのかは定かでないが、強く主張しないところが妄言を吐く人と大きく違っていた。信じるしか……ないのか?
「その話、本当なのか?」
 確かめるように、訊いた。
「……そうだったら、いい、かも」
「そう、か」
 かも、ねえ……。どうやら大室にも確信がないのが事実のようだ。というか、全てを知っているのはミナトであって大室ではない。
『信じるも信じないも貴女の勝手ですわよ』
 なんてことをミナトも言っていた。大室がミナトに再会できていない以上、大室にもわからないことだらけなのだ。ここでさらに深く追求するほどオレは非道じゃない。
 でも。
 それでもオレは、大室に夢の話をしてよかったと思った。今まで、あの世界がなんだったのか知らないままに傍観していたのだから。
 ……夢の、話?
 待て。
 オレは、どんな夢を見ていた?
 『同じ世界の夢を見ていた』
 それはわかる。
 『現在でない世界の夢を見ていた』
 それもわかる。
 でも、それがどうして未来の世界だと知っている?
 なぜ妄想の世界の夢だと思わなかった?
 その夢の中に誰がいた?
 ……答えられない。
 夢なんてもの、ふとした瞬間に忘れてしまうものだ。
 それが当たり前なのに。
 普通なのに。
 でも、どうしてだ?
 どうして、こんなにも心が苦しいんだ?
 どうして、こんなにも心細く感じるんだ?
 ほつれた糸が知らず知らずに切れてしまっていたような気分がする。
 一体、その夢の何がオレを苦しめているんだ?
 ダメだ、どうしても思い出せない。
 しずしずと溜まっていく焦り。
 どうして焦らなければならない?
 忘れたければ忘れればいいのに、どうしてここまで抵抗する?
 走り出したい衝動に駆られるが、背骨に被さるようにして積まれていく不安がオレの身を封じる。
 アパートの一室に戻った瞬間、靴も脱がずに錆びたドアに背を預けた。
 どうしてだろう。
 誰かと離ればなれになってしまったわけでもないのに。
 今は、悲しみしかない。


 朝、目が覚めたあとの枕がグショグショだったのを見て、確信する。
 雲を掴むような不安は、目的のない学校生活を送る不安は、オレの心を少しずつ蝕んでゆくのだと。
 そう、全ては大室の言う通り、前座だったのだ。
 もしこれが一つの物語なのだとしたら、今までのことは単なるプロローグにすぎない。
 これからが本番だ。
 長い長い、不安との戦いが今、静かに始まるのであった。


 ――第一部『不安』 完



・第二部『迷境(仮)』に続く

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「いや、それやってなんの意味があるんだよ。説明してくれよ」
 手を挙げる程度の動作ならしてもよかったのだが、それで束縛された世界が説明できるワケがない。
「すでに説明ができた……かも」
「いや、まだ何もやってないんだが」
「やってない、それだけで説明は不要……だと思うけど」
 不要と言われてもなあ、少しも理解できてないんだが。
「このときね、トベルくんには大きく分けて二つの可能性があった……はずなの。手を挙げるか、または今の場合のように、手を挙げないか」
 大室は不要と言っていながらも説明を始めた。まあ、そうなるだろう。オレは手を挙げなかったから『逆』を選んだことになる。
「さらに細かく言うとね、手を挙げなかったにしても、どんな考えをもって手を挙げなかったのかで色々と分かれる……のかも。迷いに迷って手を挙げなかったのか、きっぱりとした理由をもって手を挙げなかったのかとか、色々……」
 なんかワケのわからん言い訳のようなことを言っている。考え方の違い? あるかもしれないが、無いような気もする。無意識だったからな。いや、無意識だったからこそ、考えが変わっていた可能性もある。あくまで可能性だが……
「もしも、の世界は必ず別の世界で実現しているの」
 大室の世界論が正しければ、別の世界にもオレが一人ずついるってことか。いない世界もあるかもしれない。でも、別世界のオレ俺おれが全員集合なんてことしたら……恐いな。
「それで、統流の見る夢とそれはどう関係があるのかしら?」
 奏は興味を持っているようだ。そういや、奏はタイムマシンの調査をしてるんだっけか?
「今のは、可能性を簡単に説明した前座……かも。今この瞬間でも、この世界には可能性で満ち溢れてると思うの。でも、トベルくんの見る世界に可能性はない……のかも。可能性を束縛された世界がトベルくんの夢、なのかもしれない」
 つまり、有無を言わさず手を挙げさせられる世界なのか。
 それって、悲しいことだと思う。可能性に満ちた世界の話を聞いたばかりのオレが言ってはバカの一つ覚え的なものを感じるのだが、でも縛られた世界に楽しいことなんてないような気がした。全てが運命の奴隷化されたような、そんな気分になる。
「トベルくんが同じ夢を見るのは、きっと予知夢の一種……かも。予知夢は、無限大の可能性のうちの、ある一つの可能性を示唆してくれているの。占いもそれに近い……かな? トベルくんの場合は、身近な未来じゃなくて、遠い未来の予知夢を見ているかもなの。でも、その世界に可能性はないから、いっつも同じ夢を見てしまう……んだと思う」
 待て、混乱しそうだ。予知夢ってのはつまり……ん? もしそうなると意識が少しの間タイムスリップしてることになるな。そんなことが可能なのか? 誰もが予知夢をしているっていうのならこの説を疑っていたが、予知夢なんてする人そうそういないし、そもそもこの話を大室に聞かせたのはあのミナトだ。会ったことはないが、大室の語りから察するに、本気で真実を知っている。能ある鷹は爪を隠すという表現があっているのかは定かでないが、強く主張しないところが妄言を吐く人と大きく違っていた。信じるしか……ないのか?
「その話、本当なのか?」
 確かめるように、訊いた。
「……そうだったら、いい、かも」
「そう、か」
 かも、ねえ……。どうやら大室にも確信がないのが事実のようだ。というか、全てを知っているのはミナトであって大室ではない。
『信じるも信じないも貴女の勝手ですわよ』
 なんてことをミナトも言っていた。大室がミナトに再会できていない以上、大室にもわからないことだらけなのだ。ここでさらに深く追求するほどオレは非道じゃない。
 でも。
 それでもオレは、大室に夢の話をしてよかったと思った。今まで、あの世界がなんだったのか知らないままに傍観していたのだから。
 ……夢の、話?
 待て。
 オレは、どんな夢を見ていた?
 『同じ世界の夢を見ていた』
 それはわかる。
 『現在でない世界の夢を見ていた』
 それもわかる。
 でも、それがどうして未来の世界だと知っている?
 なぜ妄想の世界の夢だと思わなかった?
 その夢の中に誰がいた?
 ……答えられない。
 夢なんてもの、ふとした瞬間に忘れてしまうものだ。
 それが当たり前なのに。
 普通なのに。
 でも、どうしてだ?
 どうして、こんなにも心が苦しいんだ?
 どうして、こんなにも心細く感じるんだ?
 ほつれた糸が知らず知らずに切れてしまっていたような気分がする。
 一体、その夢の何がオレを苦しめているんだ?
 ダメだ、どうしても思い出せない。
 しずしずと溜まっていく焦り。
 どうして焦らなければならない?
 忘れたければ忘れればいいのに、どうしてここまで抵抗する?
 走り出したい衝動に駆られるが、背骨に被さるようにして積まれていく不安がオレの身を封じる。
 アパートの一室に戻った瞬間、靴も脱がずに錆びたドアに背を預けた。
 どうしてだろう。
 誰かと離ればなれになってしまったわけでもないのに。
 今は、悲しみしかない。


 朝、目が覚めたあとの枕がグショグショだったのを見て、確信する。
 雲を掴むような不安は、目的のない学校生活を送る不安は、オレの心を少しずつ蝕んでゆくのだと。
 そう、全ては大室の言う通り、前座だったのだ。
 もしこれが一つの物語なのだとしたら、今までのことは単なるプロローグにすぎない。
 これからが本番だ。
 長い長い、不安との戦いが今、静かに始まるのであった。


 ――第一部『不安』 完



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というわけで、前記事の続きですたい。


橋の端にある柱(正式名称はなんでしょう?)には、
『橋の名称(漢字)』『橋の名称(平仮名)』『竣工日』が記されているのがほとんどですが、
日本橋にもちゃんとあります。


にほんばし

これは漢字で『日本橋』と書かれていますが、もちろん平仮名で書いてあるのもあります。


日本橋あsん

どうでしょう? ちゃんと『にほんばし』と書かれていr……


にほんむし

!?



に、『にほんむし』だと……?




























それから、じょがぁは寄り道ついでに東京ビッグサイトにも寄ってしまいました(汗
いや、ほら、あれですよ。

最初は行く予定なんてなかったんですよ?

そりゃ、コミケあるってのも知ってましたよ。年末ですし。

でも、行く気はなかった。

だって、遠いんだもん。

疲れちゃうじゃん?

でもね、でもだよ?

友人が出展するっていうんなら、
行かざるを得ないだろうがっ!



つーわけで、行ってしまいましたよ。東京ビッグサイト。
コミケット会場へ自転車で行くのはやめましょう。


まあ、友人の作ったモノモノとカタログを買ったらすぐに帰ったんですけどね。
(そうしないと家に着くのが明日になってしまう)



なんだかんだで、3時ごろ帰路につきました。

どうせだからレインボーブリッジから帰ろうとお台場へ行ったんですが、


レインボーブリッジは車しか走れないんだね。


ということに気付かされた田舎者のライフはすでにゼロ。もうやる気ねえです。
というわけで、なぜか築地市場の側を通って第一京浜を走ることに。
足がもう乳酸というか、なんかもう良く分からないものが溜まりに溜まって、漕げない状態。

たまにうちを抜く本場の方の後ろに付いていかないと止まってしまいそうでしたね。
そのくらい、一人の気力じゃあダメでしたよ。

そのうち日も暮れて、集中力も落ち、
何度か轢かれそうになりながらも東京を出たときは、なんかホッとしました。

まあ、自宅から二分の一にも到達してないんですがね。


そのうち風が強くなってきて、

で、藤沢バイパスに差し掛かったところで東海道を外れたわけですけど、
もうここらじゃあ、漕いでスピード出したところで強風が殺すんですよ。

もう漕いでる自分がバカらしくなりましたね。

西から東への風。ジャストでぶつかってくるんですよ。


で、道間違えて、迷って、気付いたときには目的地の反対方面を走っていたという屈辱。
藤沢へ行くつもりが鎌倉へ行っていたというね。
(↑地元ネタでスマン)

追い風で走っていたので、今度は向かい風。

このときから混乱していたみたいで、

「今、自分は夢を見ているんだ。どこかの公園で寝ていて、今は嫌な夢を見ているんだ。いや、違うな。もううちは死んだんだ。とっくに撥ねられて、今は意識だけがうちを走らせてるんだ。身体はもう冷え切ってるし。きっとここでもう一度轢かれても大丈夫なんだろうなあ。この道はどこにも続いていないんだろう。ならうちはなぜ走ってる? 知るか、死んだからだろ」

なんてことを考えてました。
多分、あの時の自分は死んでたんでしょう。

まあ、マックに寄って休んだら現実味湧いてきましたがね。


で、

「俺には帰るべき場所がある」
「俺、無事家に着いたら結婚するんだ……」
「あいつが、待っているんだ……」

なんてことを考えるテンションになって、
まあ何度か危ない目に遭いつつも無事家に着くことが出来ましたよ^^



まあ、もう一生自転車には乗りたくない気分です。今は。
階段上がっただけで足が悲鳴上げますからね。

今回の旅は、限界を超えた、の意味を知った旅になりましたよ。



まあ、最後に言いたいのは、


仮名には異字体というものがあって、
『む』のような文字で『は』と同じ意味を成しているのですよ。


ということですかね?





(まさかの伏線回収)
ガンガンONLINE連載中の
高校生の日常』ってマンガがあるんだけど、その雰囲気がいいと思うよ。

ども、じょがぁです。

えー昨日は日本橋まで行ってきました。はい。
大体うちの家から日本橋までは約66kmあります。
某マピオンさん曰く、自転車で七時間の距離ですね。

というわけで、じょがぁは朝の四時半に出発すべく、四時に起床。




しようと思ったのですが、案の定寝坊して五時十分に起床しました。

まあでも、いろいろと準備して六時前には出発することが出来ました。


ひのでえ

七時ごろに藤沢バイパス辺りで日の出を見ました。

まさか見えるとは思いませんでしたよ^^


いちこく
日の出直後に撮った国道一号線。下りが混んでましたね。


藤沢バイパスは途中から自転車で行けなくなるため、近くを通る道を走ってたんですが、
そのうち迷ってしまいましたね。はい。


それから、横浜の中心部にも行ったんですが、
あそこは立体的すぎて
どこが地面に作られた道路なのか、
どこが地下に作られた道路なのか、
どこが空中に作られた道路なのかが全然分かりませんでしたよ(汗

何度か迷いましたよ。写真撮る暇なんてねえっす。


川崎のどこかの公園で一休みし、




ときょう
じょがぁは東京の地に着いたっ!

思わず叫んじまいましたよ。ええ。車道でしたが。


なんかみえてる
で、これが有名な多摩川。
左下に何かがありますが、幽霊なんだなって思えばいいと思うよ!
右遠方に写ってるのがきっと世田谷のビルたち。


それにしても、東京ってのは本当にビルばっかですね。
『ハルサク!』のソラも言ってたもんなあ……。


なんかね、神奈川県民から言うと、
ビル街といえば横浜ですけども、東京はその横浜がずっと続いてるんですよ。

びるる
実際こんな感じの景観がずっと続いてました。
(道逸れればそれなりに住居はあるでしょうが、どうも入る気にならないんですよ。なんか暗ーい感じがして)


さてさて、『ハルサク!』という懐かしいタイトルが出ましたけども、
『ハルサク!』といえば修学旅行で行った東京タワーです。
ええ、もちろんですとも。他言は許しませんよ。





たわあ
これはデカいぜっ!

是非とも画像をクリックしてそのデカさを感じてほしいところですね。


じょがぁは初めての東京タワーでウキウキだったんですが、
一つだけ、お恥ずかしいことながら
『ハルサク!』の東京タワーの描写は八割正しくないことが判明致しました。

何がどう違うのかは実際に行ってみれば嫌でも気付きますよ。

例えば、東京タワーは丘の上にある、とか。


でもって、行ったからには最上階まで行ってきましたよ。
確か特別展望台は1420円くらいします。250mです。

けいかん
縦に伸びている道が国道一号線です。左上にはレインボーブリッジも。左下は芝公園っす。

しかし、本当に小さい。建物が小さくて、ありきたりですが模型みたいに見えますね。


あと、ここからだと、

すかいつり
建設中の東京スカイツリーも見れちゃうんですよね。

現在250mくらいなのだそうです。育ってます。


それから、

かすみがせき

霞が関へ行き、
(法務省だけ赤レンガなんですよね。中央奥に見えるかな?)

こかい

国会議事堂を遠目で見て、
(横断歩道を走りながら撮ってたら、小さな女の子に「走りながら撮ってる~」と言われた汗)

こーきょ

皇居を自転車で一周して、
(外国人:ジョギングさん:一般人=2:2:1の比率でしたね。外国かと)


なんか要所を全て見てしまったような気がしますが、そんなこんなで目的に日本橋へ。


そして、
12時49分。

にほんばし
日本橋に到着しました!

まあ、あれですね。東海道の始まりの地ですけど、特に感動する場所ではないですよ?
ただ、高速道路の下にある、幅が広くて距離の短い橋でした。石造りです。


ここまで、正直御殿場の比にならないくらい長かったですよ。

まあ、色々ありましたが、楽しかったです。






え、続くの?

(夕方6時までには更新するはず)
明日の更新予定。

朝~三時ごろ  自転車で行ってきた感想とか
夕方~夜     翼の生えた少女はもういない。第一部『不安』完
夜以降      ???
日が明けて    あはっぴいにゅういやあ


こんな感じ。あー足いてえー。腕もあがらねえー。腰もいてててえー。
ども、朝六時に出発、夜十時に帰宅。
十八時間漕ぎまくり。
走行距離推定一五〇km以上。


そんな感じのじょがぁです。
もうね、言いたいことはたくさんあるけども、
一番言いたいのは「もう自転車乗りたくない」ですね。

いやぁ、もう、寝ますよ。明日報告できたらしよう。



あ、Read More...でコメント返信っす。

⇒続きを読む

どもども、四日ぶりくらいのじょがぁです。
今日は七時くらいまでベッドにいましたよ(汗

さてさて、じょがぁは二五日からの四日間山形市内にいました。
山形は雪では無く雨が降っとりましたよ^^
この時期に雨が降るのはとても珍しいようです。

タクシーの運転士が「異常気象なんだすかねえ?」と言っとりましたよ。

でも、駅前にもちらちら除雪された雪が残っていて、一応北国って感じはしましたよ。






はい、
兄が階段からカメラをダイブさせてふっ壊された理由で写真がありません。

もーしわけねっす(汗


まあでも、観光らしい観光をしてないので特に問題はありませんでしたがね。
夜に友達らと半袖姿でアイス食ったりはしましたけど。


にしても、そうですねえ、とても勉強になりましたよ。
まだまだ自分はちっこい人間なんだって自覚させられましたし、
それ以上に弓道というものが好きになりました。




さてさて、明日は日本橋まで行ってきますー。
それから少しずつ気持ちをノベルゲモードにしていこうかなと思います。
冬休み中に大体の構成を作って企画書作らないとなあ、と思ってたり。

さて、明日は四時起きだーっ!
どうも、明日から山形へ遠征してきます、じょがぁです。


皆さん、メリークリスマスイヴ!
きっと日本のクリスマス前夜~クリスマスはキリスト生誕を祝うんじゃなくて、
一種のお祭りなんでしょうね。

ま、勿論的なお話ですね(汗


さてさて、『翼の生えた少女はもういない。』の第十八話を更新しました^^
次回で第一部が完になります。キリのいいところで新年を迎えられますね。


さておき、前々から言っているように明日から二十八日まで山形にいます^^
やはり、そうですね、自分のためにも、それからみんなのためにも、精一杯やっていこうと思っています。

出来たら手土産を持って帰りたいものですね。ま、土産話でも怒らないでくださいね^^;


つーわけで、いってきます~ノシ
(最後の一文はこの旅行の神髄を突く伏線だったりする)

 そういえば最近、出かけることが多い気がする。
「統流! この超ジャンボ・ザ・ウルトラパフェ奢りなさい!」
 奏か。仕方がない。たまには奢ってやるか。おや、みんなも食いたいのか。やれやれ、今日だけだぞ。
 ん? 予想以上の出費になってしまったな……。
 しまった、家賃が払えない程金払っちまったぞ! 今手元には四十三円しかない!
「おやおや、統流くん」
 大家さんが現れた。
「家賃が払えなければ今すぐにここを出ていってもらおうかの?」
 待ってくれ、あと一日待ってくれたら給料が入ってくるんだ! 親からの仕送りも来る!
「親に頼りおって……」
 盛大な溜息を吐かれた。
「所詮子どもは子どもじゃ。独り暮らしなんぞまだまだ早い。さあ、実家に帰りなさい」
 待ってくれ! オレはこのアパートが好きなんだ! この町が好きなんだ!
「それはただの言い訳じゃ。統流くん、自分に嘘をついちゃいけないよ。統流くんが好きなのは……統流くんの、好きな人は……」
 待ってくれ! 言わないでくれ!
「わかった、言わないでおこう」
 よかった、とどこかで安心しているオレ。
「ただし、統流くんは地獄に落ちるのじゃ」
 どこからともなく爆弾が発射される赤いスイッチが出現し、大家さんはためらいなくそれを押す。
 畳が抜け落ちた。
 下は黒だ。
 オレはどこへ向かおうとしているのか? それとも、この黒のように向かう先なんてないのかもしれない。ただ、漆黒の中を落ち続けるだけ……。もう、終わってしまう。
 嫌だ。
 そんなのは嫌だ。
 嫌だ、嫌だ。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「うわぁあぁあ!」
 ガバリと起き上がった。
 小鳥のさえずりが窓越しに聞こえる。
 そして、ようやく気付くのだ。
 ……ああ、これが夢なのか、と。


▲四月十七日(木)開校記念日


 集合は前回と同じ場所、同じ時間だった。相変わらず早めに来てしまった。天気は快晴。まさにこれが春だ! と断言できる暖かさだ。今日は寒さに震えることなく待つことができる。
「あら、アンタにしては早いのね」
 まずは奏がやってきた。黒のシャツの上に白いレースを羽織り、上品な雰囲気を醸し出している。ジーパンがスカートで、性格を正せばお嬢様の鏡だったな。
「前と同じくらいにに来たつもりなんだがな」
「あ、そ」
 素っ気ない返事をされる。
 すぐに伊東がやってきた。襟にフリルが付いており、伊東の胸をより強調させている。黒字に赤縞模様のついたスカートに前と同じブーツを履いている。
「すいません、遅くなりました!」
 少し駆け足だった。まだ定刻前だし、そんな急がなくてもいいのに。
「さて、これで全員か?」
「コラ穂枝、俺を忘れるなぁ!」
 ちっ、遅刻しなかったか。大瀬崎も無事に着いた。ジーパンに黒のパーカーというラフな格好だ。
「……で、これで本当に全員集合でいいんだな?」
 まだ集合時間の十分前だというのに。みんな暇なんだな。
 ところが、伊東がふと気付いたように訂正する。
「あ、いえ、もう一人いるんです」
「もう一人? 合唱部仲間か?」
 その可能性も十分ある。だが、伊東は首を横に振った。
 じゃあ誰なんだよ。
 と、そのときオレンジ色のバスが目の前に停まる。学校の生徒以外誰も降りないこのバス停で、こんな時間に降りてくる奴がいるなんて……。
 驚きはここで終わらなかった。バスから降りたそいつは真っ白いワンピースと、ウエストに巻かれた赤い紐が全体を引き締め、どこか緊張した面持ちで歩いてくる。
 ……大室?
「なあ、オレたちが会っちまっていいのかよ?」
 よう、とかおはよう、とか、そういうこと以前の問題だ。白渚に出くわしたりでもしたら何をされるかわかったもんじゃない。
 すると、奏が人差し指を鼻に当てた。
 ほう、そういうことか。
 全員が揃ったところでオレたちは出発することにした。バスの中でどこへ行くのかを考えた結果、前回オレたちが行ったあの喫茶店へ行くことになった。今度は絶対に玉露を頼まないぞ……と、あの超巨大パフェを想像する前にそんなことを考えたりしていると駅に着いた。
 喫茶店を案内する。二度目の来店だが、改めて思うのだが、外観の印象さえよくすればいいのにな。ま、口コミで広がれば関係ないんだが。
 こうしてみんなで外食すると、外食に慣れている奴、慣れてない奴がよくわかる。オレはバイトで逆の立場に立っているので場慣れしているし、伊東はよく友達と食っていると聞いたことがある。大室は毎週日曜にオレのバイト先で昼飯を食ってるというし、大瀬崎も旅先では外食だ。オレを含めた四人は、ごく普通におしながきを開き、食いたいものを選ぶ。ま、この歳にもなれば嫌でも慣れる。だが一方の奏は、店の中に入る前からそわそわと店周りを見渡し、中に入っても伊東の陰に隠れるようにして移動していた。挙句、お手拭きが渡されたとき、明らかにオレの手元を見て使い方をマネていた。オレが顔を拭いたら奏も顔を拭いただろうが、あとが面倒くさいのでやめた。こいつもこいつで、大室と同じような境遇に遭ってるんだしな……。
 この店の辞書にに外れという言葉は載っていないのだろう。それぞれ違うメニューを頼み、その全てがうまかった。料理人の端くれとして、この味を見習いたいものだな。そうそう、伊東がまたしても例の巨大パフェを頼んでいた。結局オレはクイーンなんたらかんたらくーたらパフェの名前を覚えることができなかった。
 腹が満たされ、奏の希望でデパートの服売り場に赴いた。服なんてものに興味を抱かないオレにとっては退屈でしかたがないのだが、それを知っていて奏は言っている。可愛くないよな、マジで。
「穂枝ぁ! これ見てみろって!」
 大瀬崎はめちゃくちゃはしゃいでいた。つーか、そこはどう見てもスカート売り場だぞ。
「統流」
 奏に呼ばれる。両手に柄の違うキャミソールを提げている。
「これとこれ、どっちがいいと思う?」
 オレが選べというのか?
「右のがいいんじゃねえか?」
 なんとなくそっちの方が涼しそうな感じがする。
「あ、そう」
 と、左側のキャミソールをカゴに入れた。
「オレが選ぶ必要ねえじゃねえかよ!」
「あら、アンタの意見を参考にしたのよ? アンタ、センスないじゃない」
 言いたい放題だな……。
「あの、穂枝君、いいですか?」
「ほら、吉佐美が呼んでるわよ。行ってらっしゃい」
 次は伊東か……。ムダに服売り場を歩きまわってるんじゃないか? オレは。
「あの、いずみに付けるブラジャーのことなんですけど……」
「んなの選べるわけないだろうが!」
 もう嫌になってきた。
「ですが……いずみはいつも白渚君に選んでもらってるって言ってましたよ?」
「あのなぁ……。オレは白渚でもなければ、大室の彼氏でもないし、ブラジャーの選び方なんて知らないんだぞ」
 相槌を打つ伊東。熱心に耳を傾けている。そうじゃなくて反省しろよ。
「そもそも、だ」
「そもそも?」
 伊東が首を傾げる。大室もきょとんとくりくりした眼をじっとオレに向けている。
「伊東の方が断然詳しいだろうが! どうして素人目のオレに頼むんだよ!」
 女性下着売り場にて、大声で突っ込むオレ。視線が集まらないワケがない。途端に顔が熱くなった。
「す、すいません! その、いずみのサイズは小さいですし、ちょうど穂枝君と同じくらいだったので詳しいのかとてっきり……」
 何言ってるんだ、伊東吉佐美十六歳。
「キサミー、ひどい……かも」
 うるる、と大室は目に涙を滲ませる。そりゃ当り前だ。
「わわ、ご、ごめんなさい! えと、えと……変なこと言ってしまいましたか?」
 今の失言を自覚してないのなら、伊東は天然記念物ならぬ天然記念人物に認定されるであろう。
 しょんぼりと自分の胸を見て落胆する大室にも、女の子らしいコンプレックスがあるんだな。きっと白渚は大室の全てが好きなのだから気にしていないのだろうが、これは大室個人の問題だ。大室も年頃な一面を持っているんだな。いや、今までそう思わなかったオレもオレだが……。ま、こんなことを考えている自分に抵抗を感じているオレも年頃といえるのか、はたまたヘタレというべきなのか……。
「お、チョイシング中?」
 ひょいと大瀬崎が出現した。なんだよチョイシング中って。
「俺はこれがいいと思うぞ」
 黒柄のそれを手にすると、ひらひらと伊東に見せた。
「こ、これです! ベストマッチです!」
 いや、これです! じゃないからな……。
 おいこら、そいつを大室に渡すな、大室はレジへ向かうな……。あー、もういいや。
「しっかし、穂枝と伊東ってめっちゃくちゃ仲いいよな」
 前触れもなく大瀬崎が呟いた。なぜかそれほど白くない歯を見せつけている。
「そうか?」
「ええっ! あと、えと、その……っ」
 仲がいいといっても、ほどほど程度だと思っているのだが。
「ああ、仲がいいに決まってる。知ってるんだぜ、お前ら二人で時計買ってんの」
「な……」
「ひゃえ? あ、その、ええっ?」
 部屋に掛けてある素朴な時計。まさかコイツ……。
「尾けてたのか?」
「いや、俺だってそんな気はなかったさ。ただ俺は遅刻したからすぐ駅に向かっただけだっての」
 ああ、そういえば『今起きた、すぐ行く、畜生』なんてメールをくれたんだっけか。来ないとばかり思っていたんだがな。
「で、お前らが歩いてるところ見つけて、合流しようと思ったんだけどよ、その、なんだ、お前らが絶対領域作ってて中には入れなかったってこった」
 あの大瀬崎が合流できない程だと? 何がどう効力を発揮すればそうなるんだよ。
「とにかく、お前らはお似合いなんだよ」
「そうなのか?」
「え、えっと……その」
 ま、理由はどうであれ、ストーカー行為をしていたことは確かなんだな。


 日が傾いてきた頃、オレたちは水の苑地にいた。大室の家を通り越してしまう形になってしまうのだが、大室はそれでもいいと頷いた。
 湖の畔に作られた公園。昨日、大瀬崎と白渚が戦った場所。だがあのときの静けさはなく、たくさんの人で賑わっている。芝の広場では小さな子どもとその父親であろう人とがキャッチボールをしていたり、水遊びをして遊んでいる子どもを遠くからじっと見つめている母親、ベンチに腰掛けるお婆さんや滝の裏へ行ってはしゃいでいる大瀬崎などなど。
 太陽は山の間からオレたちを照らし続けている。子どもたちが跳ばす水飛沫が水晶となって弧を描く。
 滝の裏で遊びつくした大瀬崎が鬼ごっこを提案した。立ちっぱなしで疲れていたのだが、いざやってみると楽しいな。まあ、二分の一くらい大瀬崎が鬼だったんだが。たまには童心に返ってただひたすらに楽しむ。あの頃はただ夢と追いかけっこをしていたんだな……。それがいつしか夢を釣ろうとしているような気分になってしまっているような感じがする。
 ……ふう、そろそろ疲れてきたな。みんなも大瀬崎から逃げるというよりかは離れるような感じになってしまっているしな。
 ふと大室のことが気になった。あいつ、喘息持ちだよな? 今まではしゃぎすぎていたけど、果たして大丈夫なのか?
 見たところ、普通に立って歩いている……ように見えた。だが実際はそうでなかった。もう歩くことですら限界を感じているほど、症状が悪化していたのだ。
 まだ誰も気付いていない。大室は膝に手を突いて大瀬崎から一番離れた場所――滝の前にある水辺の岸――にいた。
「次はいずみちゃんだ!」
 鬼の大瀬崎が狙うのは大室だった。半開き状態の眼を大きくさせたその瞬間、大室はバランスを崩した。
 身体が傾く。大室に抵抗するほどの力は残っておらず、瞬き一回ほどの時間で水面に叩きつけられるだろう。身体が冷えて、喘息が悪化するかもしれない。
 もうダメだ。そう思った、そのときだった。
「いずみっ!」
 誰かが滝を突き破った。そして、『彼』は自分が濡れるのに構わず水辺を突き進む。そして、大室が水に着くその直前に彼女を抱きかかえた。そのまま『彼』は芝の広場に降り立ち、倒れこむようにして大室を芝生に寝かせた。『彼』も同じように大室の隣で大の字になって寝転んだ。
「いずみ、いずみ……大、丈夫?」
 息を整えながら『彼』は言った。
「うん――けほっ、大丈夫かもだよ――こほっ、ケイジくん」
 咳きこみながらも大室は笑う。
 大の字の白渚にも、笑みが漏れた。
 半ば状況を把握できないオレは、他のみんなに倣って二人の元へ駆け寄った。
「白渚……いたのかよ!」
 大瀬崎は驚いていた。オレも驚いている。どうして白渚がいるんだ? 今日は来てなかったはずだが。
「いたよ、ずっとね」
 ずっと? ずっとってことは、校門に集合してから今に至るまでずっとか?
「いずみんを守るために、僕はいるんだから」
 白渚がニカッと笑う。白い歯が夕陽に輝いた。
「なのに、オレたちを追放しなかったのな」
「うん。ちょっと、お説教されちゃって、ね」
 チラと大室の方を見る白渚の顔には、少しの照れと、ほんの僅かな誇らしさがあった。
「さて、と」
 大室のバッグから喘息スプレーを取り出し、大室にくわえさせた白渚はすっと立ち上がった。
「まずは……そうだね、みんなに感謝しないといけないかな。今日はいずみと遊んでくれてありがとう。いずみにとって、本当に久々の出来事だと思うからね」
 久々の出来事、か。そうだよな、友達と遊ぶのは中一の夏振りなんだから。
「それからいずみん、今日は一緒に遊べなくてごめんね。でも、楽しかったかい?」
 そっと大室の髪を撫でる白渚にこくり、と頷いた。
「そっか。よかったよ。それから……これは一つお詫びをしないといけないかな。統流っちとざっきー……いや、ここでは穂枝くんと大瀬崎くんと言うべきだね」
「俺らにか?」
「うん」
 白渚は頷いて続ける。
「実は今日、試してたんだ。僕がいなくてもいずみんがみんなと仲良くやっていけるかを。そして、キミたちがいずみんと仲良くしてくれるかをね」
 試してた? あれほど頑なに大室を一人で守ろうとしていたはずだ。なのに試すだなんて今更すぎないか? そんな疑問は、大室の照れ笑いで理解した。そうか、説得してくれたんだな……。でも、多分大室以外の協力もあってだと思う。大瀬崎とのバスケもそうだろうな。
「あ、ミコっちときさみーには、協力ありがとう、と言っておかないとね」
 協力とはなんだ? と疑問を抱くと「私たちも仕掛け人だったのよ。今日遊んだこともアンタたちを試すために仕掛けた罠だったってわけ」と、ありのままの言葉で種明かししてくれた。全ては計画通りだったってことか。ま、最後に大室が喘息になっちまった予想外だろうが。
 つーか、このために白渚はオレたちをストーカーしてたってワケな。とてもじゃないが一般人が成せることじゃない。でも白渚は大室のためならなんだってするんだから特別不思議なことでもないか。
「それからみんな、本当に……ごめん」
 白渚が頭を下げた。白渚のつむじを今まで見たことがなかった。
「僕は馬鹿だ。ずっとみんなの言ってることが正しいことなんだって、薄々とは気付いていたんだ。理解していたつもりなのに、僕は穂枝くんと大瀬崎くんにひどいことをしてしまった。せっかくみんな仲良くなってきたのに、僕はそれをぶち壊してしまった。いずみはもう子どもじゃない。いい加減僕がいなくても何とかやっていかないといけないのに。わかってる。わかってるけど、僕はいずみの手を離すどころか、緩めることさえできなかった。子どものままだったのは僕の方だったんだ。いずみのことを一生守っていかなくちゃいけない。そんな使命感ばかりずっと強くて、いずみのこと、わかってるつもりで、なんにもわかってなかった。いずみを守ることが義務なんだって、心に言い聞かせていた。でも実際は違うんだよね?」
 言葉を一端切り、下げた頭を上げる。
「今なら、みんなの前でも言える。義務とか使命とか、そんなもの関係ない。僕は、今ここにいるいずみが好きだ。だから……ずっと、大切にしていく」
 大切にしていく。この言葉は『守っていく』とは意味が違う。すぐに壊れてしまいそうなものをそっと温めているような、そんなやさしさを持っている。
「それで、がっぴー」
「がっぴー言うなっ」
 大瀬崎の言動は荒いが、表情はにこやかだ。
「命令権の期限ってまだ大丈夫?」
 昨夜のバスケで得た絶対命令権のことか。
「そうだな、じゃああと一分でどうだ?」
 大瀬崎、適当に言っただろ。
「うん、ちょうどいいね。それじゃあ、これは僕が二人へ、いやみんなへの命令……でいいのかな?」
 命令というかお願いだけど……いや、命令にしておこう、なんて独り言を一通り終えたあと、オレたちに真剣な眼差しを向けた。
「どうか、意地ばかり張って、頭の固い僕と、人見知りばかりするけど、とっても優しいいずみを、これからも……宜しく、お願いします」
 もう一度、深々と頭を下げた。彼のびしょ濡れになった髪の毛から数滴の水が垂れる。大室も身体を起こし、ペコリとお辞儀をした。
 しばらくの沈黙が続く。オレが白渚に対して言いたいことは一つだけしかない。きっとみんなも同じことを考えている。でも、どう切り出せばいいのか迷っていた。
「くっ、くく、クククッ……」
 大瀬崎が笑い声を押し殺しているが少しずつ口から漏れ、最後には大きな声を上げて笑った。
 きっと、大瀬崎の一言を皮切りに、オレたちはそれぞれ白渚に一言ずつ思い思いの――でも、言いたいことは同じ――言葉を口にするだろう。
「し、白渚のクセに水臭せえじゃねえか! 俺たちまで調子狂っちまうって」
「水臭いのは水浸しだからだろ。白渚、風に当たってたら風邪引くぞ」
「そうね、風邪は勘弁してよね。かかると本当に苦しいんだから」
「それに、白渚君といずみがいなかったらとっても寂しいですよ」
 オレたちの気持ちは同じだ。
 意地っ張りだって、人見知りだっていいじゃないか。
 オレたちはわかり合えているのだから。
 それが、友達なんだから。
「みんな……ありがとう」
 オレたちは二人を迎える。臆病で無口な彼女と、彼女を支え続ける彼氏を。
 これが、オレたちだ。
 オレたちの、形だ。


 夕焼け空を映す湖に浮かぶ一つの羽根は、ずっとオレたちを見つめていた。そして何かを言い残したあと、タンポポの種が風に運ばれ流れるように、粉塵となって静かに消えていった。



第十九話『不安』に続く

第十七話に戻る
目次に戻る
『城ヶ崎の小説ども』に戻る。
えー、テストが還ってきますた。

点数の低い順から並べますと、


英語<<越えられない壁<<AE=化学<古典<現代文≦数学

 <<越えられない壁<<保健≦現代社会=地理


注)『≦』は僅差の記号ってことで


みたいな結果になりました(苦笑

ええ、なんかもう大学受けるなって感じですよね。
受験で必要がない地理・現代社会・保健・数学がベストフォーを牛耳っているとは……。

ちなみに『越えられない壁』=『14点の差』という等式が成り立ちます。
理系の方、是非とも代入して下さいませ。


ちなみに、奇跡的にも赤点はありませんでした。
最高点を取った地理と現代社会、最低点を取った英語の点数差は49点です。
あと1点差が開いていればちょうどよかったのに。


しかし、最高点の現代社会の学年平均点が78点ってどういうことなの……?

※平均割った教科の詳細は忘れました(汗


うん、頑張ったけど、努力が足りなかったんだな。
あれ、次の木曜日って二四日だよね……?


それじゃあ旅行の前日じゃないか。
『翼の生えた少女はもういない。』普通に更新できるのに……。
どうして今まで二五日に更新すると思ってたんだろう……?

というわけで、『翼の生えた少女はもういない。』は二四日(木)に更新っす^^;


ども、じょがぁです。

今日は色々とクリスマスプレゼントを買ってきました。
もちろん自分用です。


というわけで、イヤーキャップとFFVI、あと弓道関連の物を買いました。
わーい……。

しかし、最近は妙に疲れる。
弓道ってこんなに疲れるもんなんだなあ、なんて思いながらゴートゥーベットしてきます。

FFやりながら。
http://ameblo.jp/hamubane/entry-10414830142.html

!?


決めた。スクエニの社員になる。

ども、PS3なんてもの持ってませんよ、じょがぁです。


ええ、なんか話したい内容をすべて持っていってしまった冒頭文。
果たしてじょがぁは何を話そうとしていたのだろうか……?




ああ、そうだ、一時間ネットサーフィンして思い出した。

自転車乗って耳が痛いときはこいつが便利っぽいですって話でした。


……まあ、ヘルメット装着と兼ねるときに重宝しますね。









それだけかよっ!


オチナシ
五日前の予感が的中したよ☆
(三行目二つ目の文的な意味で)

ども、タミルイーラム解放の虎、じょがぁです。そのうち介抱を頼むかもしれません。


さてさて、テストが終わったじょがぁですが、そうですねえ……。
まあ、例によって得点予想を行きましょうかね。


化学≦英語≦数学≦AE≦古典<<保健<現代文<<<現代社会≦地理


うん、多分こんな感じだと思います。
下層の競争がとても激しいですね(←自虐ネタです

まあ、そうなるわな……。
ってな感じの感想ですね。結局化学は何も出来なかったような気がする。
地理も予想以上に出来た気がしないですし……。
努力しないといけないんですよね。わかっとるんです。
ただ、うちは未だに弱いままなのですわな。きっと。


はい、そこらへんの反省は蒲団の上でやるとして、

ついに堂々と本格的にノベルゲームの制作に取り組むことが出来そうです。


近々タイムテーブルを作成しないといけないなあ……。
うん、タイムテーブルって用語が出たあたり、ゲーム作ってるって感じですね^^
(『もういない。』でもタイムテーブルは作成してますが)

※ちなみにタイムテーブルというのは、物語の中にあるスケジュール表というか、ある種の未来日記みたいなやつですね。『○月×日、天気は雨。主人公がメインヒロインに初めて出会う。そのとき友達Aは家で読書をしている。○月△日、天気は……』なんて感じのやつです。



あと、これは事務的な連絡みたいになっちゃいますが、
じょがぁはワケあって12/25~12/28は留守にします。





ワケあって、なんていうと不審に思われるかもですね^^;
まあ、要は旅行です。三泊四日の。

あ、家族ではありません。普通に男だけです。クリスマスなのにね!
クリスマスは爆発しろ。
んで、新幹線乗っちゃいます。長いトンネル抜けると雪国だよこりゃ。

とまあ、そんなこんなで、その四日間は更新が無くなっちゃう可能性があります。
(『翼の生えた少女はもういない。』は予定通り更新する予定ですが、ミスって不具合が生じる可能性があります。そのときは、あにさんに頼もうかなあ、なんて勝手に考えているわけですが、もし無理だったらスイマセン;;;)


以上、なんだかんだで今日は執筆してないなあ、と思ったじょがぁでした。
最近寒いので温かくしてお過ごしくださいませ~。
ちょっと自転車のこと調べてたら、
主観的に書いてあるニコニコ大百科の記事がとても秀逸でよかったなあ、
なんて思いました。

http://dic.nicovideo.jp/a/%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A%E6%97%85%E8%A1%8C

ランドナーなんていう種類の自転車があったんだなあ……。
こういうの見ると、バイトしたくなるんだよなあ。うん。

ってか、経費抑えても二十万円ねえ……。自転車旅行って大変だなあ。

そんなこんなで、化学頑張ろうなじょがぁでした。

「僕の勝ち、だね」
 白渚は勝ったことを誇らしげにすることなく、感情を押し殺して呟いた。やけに国道から聞こえる車の音が気になる。伊東がビクリと身体を伸ばした。自分の活躍でオレたちの首を絞めたことに気付いたようだ。よっぽど試合に集中していたのだろう。責める気にはならない。
「統流、ごめん……」
 奏が謝る。オレはどう反応すればいいのかわからなかった。
「神子元が謝る必要ねえよ」
 大瀬崎が奏の肩を軽く叩いた。
「俺が神子元を巻き込んだだけだ。もちろん伊東もな」
 そして、身体をこちらに向ける。
「悪い、穂枝」
 大瀬崎……。
「お前、いつからそういうキャラになったんだよ」
「ちょ、せっかくのいい雰囲気をぶっ壊すなっ!」
 大声で突っ込むお前も雰囲気クラッシャーの一員だぞ……。
「それで、大瀬崎くん」
 白渚が話を戻す。
「今の試合、僕の勝ちってことでいいのかな?」
「ああ」
「絶対命令権ってやつも……」
「ああ」
 大瀬崎はキリッとした眼を白渚に向けている。
「お前、ひねくれキャラじゃねえのかよ」
「どっかのお前さんと一緒にすなっ!」
 突っ込みで顔がひねくれてるぞ、物理的な意味で。
 しかし、キャラに似つかわしくない清々しさだ。
「白渚、いい勝負だった」
 しかも相手に握手を求めている。
「こちらこそ、本当にいい勝負だったよ」
 お互いに手を握り合った。失ったものはデカいが、得るものもあったみたいだな。
「で、白渚、命令は何にするんだ?」
 握手を終え、大瀬崎は臆することなく話を持ち出した。こいつのどこから勇気が湧いて出ているのだろうか? ……いや、これは勇気じゃない。全てを受け入れているだけだ。
「命令といっても、僕には必要ないよ」
 まるで答えを用意していたかのような即答ぶりだった。
「それってまさか……!」
「あ、勘違いはよしてくれ。キミたちはいずみんと関わっちゃいけない……それはもうお昼に決まったことだからさ」
 そのとき、初めて気付かされた。大室が隔離される件は、白渚が勝つとか、命令をするとか、そういう以前の話だった。昼の件をなしにしてくれるなんてこと、初っ端からありえなかった。
「そういうことで、この命令権は大切にとっておくよ。それじゃ、もう帰りのバスがなくなっちゃうから、僕たちは帰るよ」
 いずみん、と白渚は大室を呼んだ。
 ……こくり。心なしか、大室の頷きがいつも以上に小さかった。
 それから、伊東と奏も帰り支度を始める。伊東はこっちが申しわけなくなるくらいに謝りまくっていた。オレなんてどうでもいいから、大瀬崎にも少しは詫びておけよ。
 女子二人が帰ると、残ったのはオレと大瀬崎だけになった。春の夜は動かないと寒い。大瀬崎も身体が冷えてきたのか、そわそわと身体を動かしている。格好が格好だから仕方がない。
「穂枝」
「ん?」
「風呂、貸してやる」
 久しぶりだな、大瀬崎が誘うなんて。銭湯も閉まる頃だし、是非とも大瀬崎の家に寄りたいものだった。


 大瀬崎の家には度々お邪魔をする。あのボロアパートには風呂が付いていないため、ときどきここの風呂を借りている。狭くて隅が汚れているものの、ここの風呂にはもれなくアヒルが付いている、ということで気に入ってたりする。ちなみにそのアヒルの尻尾に丸い字で『ひずえ』と油性ペンで記されている。ま、どーでもいい話なんだがな。
 とまあ、こんな感じで風呂から上がったオレは大瀬崎の部屋へと直行する。相変わらず足の踏み場がないほどの散らかりっぷりだ。ここまで来ると床に散らばったものをどかす気すら起きず、そのまま寝転がる。
 普段は適当にマンガを読んだりゲームをしたりして遊ぶのだが、今日は大室の話をしている。
「はあ……いずみちゃんと付き合いたいなあ」
 この部屋の主は溜息交じりに己の願望を漏らす。
「まだ言うか。もう『田舎来い』は終わったんだろ?」
「とは言うけどさあ、この想いも同時に終わって、きっぱり諦められるわけないだろ?」
 それも一理ある。いつまでも引きずるからな、男ってのは。
「でもな、そもそもお前には魅力がないからダメだ」
「なに! 俺に魅力がないだと? これを見てもか? 見よ、俺の肉体美!」
 と大瀬崎は踏ん張って力こぶを見せた。いや、お世辞にも『美』を付けられるほど美しくはないぞ……。
「お前な、魅力ってのは見た目だけの問題じゃない」
「マジかよっ!」
 衝撃の事実を聞かされ、床に伏す。いちいちリアクションがオーバーだ。
「さておき、普通に仲良くなるには共通の話題が必要だよな」
 もう会えないわけだが、むしろ会えないからこういう話で盛り上がりたい。
「共通の話題?」
「ああ。オーソドックスなのを挙げれば、趣味だな」
 それから話題を広げれば、お互いのことがよくわかるし、同じ趣味だったらそれだけで仲良くなれる。
「趣味? ああ、俺はサイクリングだな。俺、週末になったら三浦半島行くんだ……」
「……お前、途中で事故ると思うぞ」
「不吉なこと言うなよ!」
 不吉なことを言ったのはお前だ、と言っても理解されないだろうから黙っておこう。
「しかし、相変わらず凄えところまで行くよな」
 いずみがサイクリングを趣味としてるとは到底思えないが、大瀬崎の旅好きは本物だ。
「ま、やっぱり一番は富士山で決まりだけどな!」
「ああ、そういやお前、初日の出見に行くって言ってたよな」
 あれは……そう、まだあいつがオレの部屋にいたころだったな。
「樹海巡り、楽しかったか?」
「巡ってねえよ!」
 目を大きくさせて突っ込んだ。あの時は樹海巡りで大瀬崎をいじり倒したものだ。
 懐かしいな……。
「なあ……そういや、お前が樹海行くって本気で信じてた奴、いたよな?」
 ソフィア、懐かしいよなあ。
 久々にそんな話をしたかった。
 なのに。
「ああ。えっと、確か……あれ?」
「どうした?」
 大瀬崎の顔が焦りのような、戸惑いのようなもので曇っていく。
「いた……っけ? もう一人いたような……でも、あの時は伊東とも知り合ってなかったよな?」
 ついに狂ったか? 大瀬崎。
「いや、だってさ、お前も神子元も、そういう冗談は言うけど、マジで言う奴じゃねえじゃん? ……ってか、あれ? っかしいな、あのとき三人だけだった……っけ?」
 頭を掻き、大瀬崎は何かを必死になって思い出そうとしていた。だが、なかなか思い出さない。
「なんだよ、忘れたのか? ほら、翼の生えたあいつだよ、えと……」
 誰だっけ? と思考を巡らせ、やっと名前が思いつく。
「ソフィアだよ。ソフィア」
「ソフィア……? あ、ああ。あいつね、ソフィア。バカだな、なんで俺ソフィアのこと忘れてたんだろ」
 大瀬崎はよく女子に『ちゃん』付けして呼んでいる。ソフィアに関しても例外ではなかったはずだが……。でも、気のせいかもしれない。特に気にならなかった。
 そのあと、あいつの話は隅に置き、大瀬崎をいじり続けた。やがて、話し疲れたオレは帰路に就く。大瀬崎家に泊まることは一度もなく、今回も例外でないわけだが、それ以上にあいつの話をしたあとから大瀬崎と話したくない気分だったからだ。


▲四月十六日(水)


 次の日、大室は休みだった。担任から理由は説明されなかったし、皆気に留めることはなかったから、きっと大室がいても変わらない日常が送られることだろう。
「ちぇ、残念だ」
 オレと大瀬崎だけなのか? このクラスで大室を心配している奴は……。
 大室がいないってことは、白渚も看病のために欠席しているかもしれない。
 なあ、これでいいのか? 白渚。
 昼飯は久しぶりに学食になる。オレも今日は弁当を作っていない。昼休みを知らせるチャイムが鳴り、立ち上がった。大瀬崎は……すでにいない。さっき突風が通り抜けたのだが、もしやあれが大瀬崎だったんじゃないのか? ったく、どんだけ学食が楽しみだったんだよ。
 食堂へ着くと、大瀬崎が入り口で痙攣しながら倒れていた。
「餓死か?」
「満身……創痍、だ……」
 微妙にずれた答えだな。
「タイムは……タイム、は……?」
 虫の息の大瀬崎が掠れた声で訴えかける。
 大夢。正式名称大夢定食。少年よ、大志を抱け、というかの有名な名言に心打たれた食堂のおばちゃんが「大きな夢を抱いてほしい」と考案した定食だ。文字通り食べた人を夢の世界へと連れていってくれる。なぜか大夢定食と桃色・女王様ラーメンのセットを完食した者はいないという伝説が残っている。なぜかは……察してくれ。
「安心しろ、大夢定食はいつだって余るほどあるぞ」
「違……そう、じゃ……」
 大瀬崎は力尽きた。
 やれやれ、そろそろ混む時期だし、『これ』は椅子の上にでも置いておこう。
 久しぶりの食堂は懐かしかった。大室や伊東の弁当もうまいが、ここのカツサンドは格別だ。隠し味は一体何なんだろうか?
 ちなみに大瀬崎にはお望み通り大夢を買ってやった。無論奢りじゃないぞ。目が覚めた大瀬崎が泣くほど喜んでいたことだし、買ってやった甲斐があったってもんだ。
 大瀬崎が定食を食い終わるのを待っていると、伊東からメールが来た。
『明日、みんなでまた遊びませんか?』
 明日? 明日は平日だが……そうか、開校記念日なのか。担任め、何も知らされてないぞ。聞くまでもないが、大瀬崎にも相談をする。
「決行だっ!」
 二つ返事でゴーサインだった。
 こんな日常ってのも、アリっちゃアリだな……。


学校にいる間、大瀬崎と一緒に昔のことを振り返ることは一度もしなかった。もしも冬の話が持ち上がってしまったら……オレは耐えられなかったろう。
 コツを習得しなければ一発で入らない鍵穴に鍵を差し込む。いい加減油を差さないと、と毎度思い返されるドアの音。今日もまた暗い部屋がオレを迎え――、
「おかえり、統流くん」
 迎え……?
 まさか、帰ってきたのか?
 あいつが、翼の生えた少女が!
「ほれ、突っ立ってないでお上がり」
 ……あれ?
 あいつはあんなにしゃがれた声をしていたっけか?
 まさか、ウラシマ効果?
 あり得る話だ。未来で必要とされていたあいつだが、年老い役目を終えたあとでならこっちの世界に戻ることくらい簡単だろう。
 オレのことを覚えてくれていたのか……。
「ほれ、ワシのオゴリ、じゃよ」
 だが、残念なことに、今の声は明らかに男性のものだった。
 そして、ちゃぶ台には似合わない程豪華な料理の数々。部屋中に漂う香ばしい香り。
 大家さんがお茶を飲んで待っていた!
「どうして大家さんがオレの部屋で飯を作って待ってるんすか?」
 大家さんが美少女だったら、この上なくベッタベタのマンガになるのだが。
「ほれ、この『ぴらふ』が自信作じゃよ」
 大家さんはまるで聞き耳を持たないようで、穏やかに笑っていた。
 やれやれ、食うしかないか。
 靴を脱ぎ、カバンを放り、大家さんと向かい合って座る。ちゃんと箸や取り皿まで用意してくれていた。湯呑にはお茶も入っている。
「それでは、召し上がれ」
「はあ……。じゃ、いただきます」
 どうしてこんな状況になっているのだろうか? まあ、最近の夕食は誰もいなかったから、こう賑やかだと嬉しいな。
 とりあえず大家さん自慢のピラフを頂くことにする。
 湯気からしてうまい。一口入れれば一目瞭然で、お米の硬さ加減、油加減、火加減、全てが程良く調和され、一つの作品が出来上がっていた。
「大家さんって、料理うまいんですね」
 いや、単に上手なだけではない。
 味がうまいとか、それだけでなく……これは、なんというべきか、覚えのある味だった。懐かしい、というよりかは、食べ慣れた、食べやすい味だった。前に食ったことがあったっけか?
「これでも得意料理は醤油和えスパゲッティなんじゃよ」
 大家さんは終始とてもご機嫌だった。大家さんとの夕食は恐らく初めてだったが、とても会話が弾んだ。爺ちゃんはオレがガキん頃に亡くなったが、きっと生きていたらこんな感じだったんだろう。
 帰郷ぶりに食った豪華な飯は意外とあっさりなくなってしまった。食器を洗った後も大家さんはちゃぶ台のところでお茶を飲んでいた。
 二人でのんびりと過ごす時間。いつぶりだろうか? ずいぶんと心が休まる。ここにあいつがいれば、もっともっと安らぐのに。でも、もうあいつはいない。一生会うことすらできない。いい加減に現実を受け止めてくれ。
『いた……っけ?』
 なあ大瀬崎。なんでど忘れなんてしたんだよ。ど忘れなんだろ? まさか、本気で忘れただなんて言わせねえからな……。
「統流くん、どうしたのかい?」
 大家さんは空になったオレの湯呑にお茶を注いでくれる。
「あ、いえ。すいません」
 湯気の立つお茶を口にし、喉を鳴らす。食堂に熱いものが通った。
 落ち着けるもんか。そんなもんでオレの心に平安が来るとでも思うのか?
 なあ、大家さんならわかるよな?
 オレの、グチャグチャになった脳ミソがねっとり練られていく気持ちを。
「あの、大家さん」
「なんじゃ?」
「あいつ……ソフィアのこと、覚えていますか?」
 聞いた。
 それが、もし後悔することになるとしても、聞かずにはいられなかった。
「ほう……」
 大家さんが目を細める。
「ソフィアさん……ですかな? ふぉっふぉ、懐かしい名前じゃ」
 よかった……。
 ソフィアさん。大家さんはあいつのことをそう呼んでいたから。
「確か……伊豆の踊り子さんじゃったかの?」
「いえ、違います……」
 いつもの大家さんだった。
「大家さんもあいつのこと、忘れてるんじゃないかって……少し、不安だったんです。もしかしたら……オレもあいつのこと、忘れるんじゃないかって」
 それから、昨日の大瀬崎の話をした。あまり話したくないことだったが、大家さんにだけでも話したほうがいいと思った。
「それは……悲しい話じゃの。でも、安心しなさい。ワシはずっとずっと、翼の生えた少女の存在を忘れないよ。絶対に、じゃ」
 その決心が、オレを安心させるためでないことくらい、目を見ればわかる。
「どうして、そんなことが言えるんですか?」
「統流くん、ワシはあなたと同じ『におい』がするからだよ」
 即答される。逆にオレが戸惑ってしまう。
 オレのにおい? なんだそれは?
「そうじゃな……強いて言うならば、お茶の『におい』じゃ」
「お茶?」
 大家さんはゆっくりと頷いた。
 そりゃ、大家さんならオレと同じくらいお茶飲んでるだろうけど……。
「翼の生えた少女、か……。懐かしいの」
 大家さんは遠い目をする。オレには、数ヶ月前を見ているというよりも、自分の少年時代を思い出しているように思えた。
「大家さんも昔会ったことがあるんですか? 翼の生えた少女に」
 ってことは……。
 あいつ以外にも、未来からやってきた人間というものがいる、ということなのか?
「あるよ。とってもべっぴんさんが一人、な」
 大家さんの肯定の頷き。確かに存在したのだ、未来からやってきたもう一人の人間が。
 だが、冷静に考えてみる。大家さんのボケが始まった、という可能性も捨てきれないんじゃないか?
 あり得る……。というか、パターン的にそろそろボケる頃だ。
「あの、それってソフィアのこと、じゃないですよね?」
「ソフィアさんじゃ」
 ん……?
「えーっと、オレの部屋にいた、『あの』ソフィアですか?」
「ソフィアさんじゃ」
 子供のように目を煌めかして頷く。そりゃそうだけど……。じゃああの遠くを見るような瞳は単なる気のせいだったのか?
「……そうじゃ、せっかくソフィアさんの話が出たんじゃ。統流くんにとって、少しだけ為になる話を聴かせてあげようかの」
 それを聞いたところでソフィアに会えないことに変わりはない。ましてや大家さんのことだ、的外れな説教になるかもしれない。でもオレはほんの僅かな希望を祈ったのか、首を縦に振っていた。
「ソフィアさんは旅立ってしまった。ワシらにとってはとても触れられぬ世界で、決して追いつけることのない遠い遠い未来の世界へ、じゃ」
 大家さんの長い話が始まる。
「旅立ったあの日から、もう幾つの月と日が経ったんじゃろうな……。じゃが、ワシは思うんじゃ。時とは、過ぎ去るものではない、とな。ましてや単に一方へ流れるものでもない。川の岸は洪水の都度姿を変え、朽ちた倒木から芽が萌え出づる。この世の全てのものに記憶があるのならば、時とは積み重なった全ての記憶じゃろう。ワシはこの町の『時』をずっと見続けてきた。じゃからワシは忘れんよ。この町の記憶はずっと、な」
 それは当たり前のことで、だがよく考えると斬新な思想でもあった。
「……オレにも、言えることでしょうか?」
「それはわからぬよ。統流くん、あなたは六十年前のこの町がどんなものだったのか、知っておるかね?」
 オレは、首を振った。ここらの歴史なんて興味がなかった。実家周辺の昔話も、もう忘れているくらいだしな。
 大家さんは悲しく笑った。
「それと同じじゃよ。残念なことじゃが、時は新たな記憶に埋もれ、忘れ去られてゆくものなのじゃからな……」
『確か……あれ? いた……っけ?』
 大瀬崎の言葉がよぎった。
「嫌だ。オレは忘れたくない。あいつの存在を!」
 オレは何に対して反抗しているのだろうか。何に反抗すればあいつのことを忘れられずに済むのだろうか?
 そもそも、どうして忘れることを前提に考えてしまっているんだ?
「忘れたくない、かの。とても苦痛なことじゃろう……。『時』に抗おうとすることはつまり、世界の秩序を乱そうとするものじゃからな……」
 秩序を乱す?
 ソフィアを忘れずにいることで、どうして世界の秩序を乱すことになるんだ?
 わからない。わからないまま、時が過ぎていく。
「『きせき』の話を昔にしたのを覚えておるかの?」
 大家さんがそっと問いかける。
 覚えていないはずがなかった。
「どんなものにも全部理由があって、偶然なんてものはありえない、というあれですよね?」
「そうじゃ。偶然が始まるのが『過去』で、たくさんの偶然が積み重なった今を『現在』と呼び、無限に広がる可能性のうち、ある一つの未来に繋がる偶然が『きせき』なのじゃ。そして、小さなことでもいい、『きせき』には理由があるのじゃよ」
 あの時と同じことを繰り返す。
「つまり、どういうことなんですか……?」
 どうしてここでその話が出るんだ?
「いいかい、統流くん。この世界でも、『きせき』は起こり得る、と言うことなんじゃよ」
 奇跡が起こる? もしその奇跡とやらで願いが叶うのなら、もう一度あいつに会いたい。
「ソフィアと、また会えるのか?」
 しばしの沈黙のあと、大家さんは微笑んだ。
「さあ、それはわからんよ。でも、じゃ。ワシが言いたいのは、信じ続ければいつかは『きせき』の種を見つけることができるかもしれん、ということじゃよ」
 オレにはまだわからないことだったが、大家さんの言うことだ、何かとても重要なことかその真逆かのどちらかだ。
 大家さんはコタツに手を突いてゆっくりと立ち上がった。
「さて、統流くん」
 曲がった腰で、ゆっくりと棚まで移動し、その上に置いてあるロケットを手に取った。
「この首飾り、借りてもいいかな?」
 鉛色に輝く涙型のそれを胸まで上げ、オレに見せてきた。
 まあ、貸すくらいならいいだろう。快く承諾しておく。
「ふぉっふぉ。よかったよかった。実のところ、今日はワシはこれを借りに来たんじゃよ」
 もう一度嬉しそうにフォッフォと笑うと、ロケットをポケットにしまった。
「それでは、もう夜も遅いことだし、ワシは寝ることにするよ」
 小さく笑い、大家さんはそそくさと部屋を出ていった。
 大家さんがオレの部屋に用事があって来たことなんて一度もなかった。
 よっぽど借りたかったんだろうな……。大家さんのことだから、その理由は全くもって不明であったが。



第十八話『水辺の夕陽』に続く

第十六話に戻る
目次に戻る
『城ヶ崎の小説ども』に戻る。
自転車で、大体七時間あれば日本橋まで行けるのか……。

飯とかそういうの含めると八時間……いや、九時間。
十六時間あれば帰ってこれるというのか……?



うーん……。

無謀だと思ってたけど、開場が十時っていうんなら、十一時くらいに着けばちょうどいい感じじゃないか……?

つまり、午前四時に家を出ればいいんだな?






まあ、うん。

勉強逃避中なんだ。すまん。
これから頑張るよ。
地理は落としたくないんだ。
なんかもう独り言なのかどうかさえ分からないけど、でもなんかよく分かんないよ。
何書いてんだろう。何回転だろう。
ぴゃ~。


はい、じょがぁです。生きてます。
まさかの英語で腹痛☆ゴー・トゥー・トイレット・アンド・ヘル☆★☆★

ども、腹括ってます、腹痛だしね、じょがぁです。

多分朝食ったオムライスのせいだ……。
※じょがぁは朝、大量に食うor脂っこいもの食うと時たま下すのです。

とゆーか、まだ腹の調子が悪いという……。


ネタになる程度の症状で治まってほしいものですね。


さてさて、こんなおいしい出来事があった訳ですが、
今日は単に作業用BGMの方を紹介したかっただけなんですよね^^;


↓というわけで、作業用BGMにどぞ↓



このうp主は作業停止するような曲がないので好きです^^
欲を言うと、再生時間が百分くらいあればいいんですがね……。


でもって、今日の英語と現代文を含めた点数予想。

英語<AE<<保健<<現代文<<<現代社会

こんな感じかな……?
英語さん頑張って。



さてさて、今更になって思ったこと。

あ、ノベルゲームの話ね。

OPとEDのアニメーションをどうしよう……?
なんてことを考えていたりします。
ああいうソフトって高いんですよね……。
フリーソフトは、なぜかびすたさんが拒絶しちゃいますし……。
最悪、Windowsムービーメーカーで作るという荒業を成さねばならぬのか……?






いや、それは無いだろ、さすがに。


というわけで、Read More...でコメント返信っす。
うう、腹が……主に直腸がゲッダンしてるぜ……(乗物から降りるようなイメージで)

⇒続きを読む

テスト一日目\(^o^)/

ども、じょがぁです。


えー、今のところ、点数の低かろう順番から、


Advanced English<保健<<<<<現代社会


みたいな感じですね。
※アドバンスドイングリッシュは、英語の文法を中心にやってく文系的な教科です。

AEは平均点のやや下を行けばいいほうだよな……。


現代社会に対抗できるのは地理しかない……。
ま、その地理ももう少し頑張らないと満足のいく点数は取れなさそうですが。



さーて、明日は英語と現代文。(色々な意味で)楽しみじゃけん。
さあ? なんか知らんけど、こういう更新が増えていくのかねえ……?
ども、じょがぁです。

勉強は……まあ、後悔しない程度に頑張ってます。きっと後悔するだろうけども^^;

というわけで、もう年末ですね。
『翼の生えた少女~Another Story of WORLD FUTURE~』が
コミケに出展されて、もう少しで一年なんですね……。

いやぁ、早い早い。じょがぁは全く成長してなさそうな気がしますよ、ええ(汗
来年は少しくらい成長できたらいいですね。

というわけで、来年の最初の目標である『ノベルゲームを完成させたい』の第一歩として、
今からそいつの企画をしておりますわけです、はい。

てことで、多分来年は↓みたいな画像使って状況報告したりするんだろうなあ、なんて……。

1
(↑冒頭のサンプルシナリオっす^^
 ノベルゲームのシナリオはこんな感じに作るんだそうですよ)

やたら頭の悪いびすたちゃんですが、
バーティカルくんの力を借りて頑張っていきたいと思います。


ちなみにバーティカルくんはもう昨年の九月――
翼の生えた少女が完結した直後からの付き合いになるんですね。

ツリー形式で、とても見やすいです。コンパクトですからね。
しかも無料ってところがすごい。

ってなわけで、
http://truestories.hp.infoseek.co.jp/
ここ行けばダウンロード可能ですよ^^

ま、使う人がどれだけいるのか知りませんけどもね!


ってなわけで、話は戻りますが、
(画像見るとわかるかもですが)未だに作品タイトルが決まってないんですよね、これ……。

いや、大体構成のまとまってない自分のせいなんですがね^^;

結末の構成が出来上がったらタイトルもきっと出来るはず……。
(捻りすぎて出てこない可能性大ですけども)

ま、机上の空論を並べても仕方無いですし、
テストが終わったらバリバリ構成立てていきたいと思いますがな。


おっと、忘れそうになりました^^;
Read More...でコメント返信っす。

⇒続きを読む

ぐあぁぁあぁあ!!!

書きたい、第二部を抜かして第三部を書きたいぃぃぇぁぃぉぉぉぉ!!


しかし、しかしだ。今は抑えるんだ。やることがあるんだ。
テストとか
 テストとか
  テストとか
   テストとか
    テストとか
     テストとか
      テストとか、
     あとテストとか。



ノベルゲームの方の構成もきばらんといかん。
その前にキャラクターになりきれてないからシンクロ待ちなんだわさ。

くそぉぉ、ああああああ! おおおおお!

『あ』と『お』って何となく似てるよね。


Fooo! FFVIがやりたいぜぇぇい! AIRもやりたいぜい!
来週まで我慢しいやねーん! なんでやねーん! なかむらしょうねーん!



(ぶっ壊れてますが、色々頑張っていこうと思っているじょがぁでした。
みんなもやることあるんなら逃げたらアカンぜよ。逃げちゃアカンが相談必須だぜよん)

 バイトを終えたその足で水の苑地まで走る。今日は久々に温かい夜で星がよく見えたのだが、そんなものを見る暇もなかった。
 時刻は八時半を過ぎていた。バイトが少し長引いてしまったのだ。親方に無理言って早めに上がらせてもらったのはいいのだが、それでも定刻に間に合うことなく、ようやく辿り着いたわけだ。
「遅いぞ、穂枝」
 大瀬崎を含めた全員が集まっていた。
 若い芝が生え、滝の音に包まれている公園のはずなのに、なぜか不気味な沈黙が立方体をした灯篭のようなものと一緒に芝の広場を囲んでいる。
 遅くなった、と詫びる。その時に暗がりから浮かんだ大瀬崎の格好を見て息を呑んだ。
 どうしてこいつ、サイクリングの格好をしているんだ? 赤と白が際立つ半袖のアタックジャージを着、黒のショーツを穿いている。パイロットのように脇で抱え持つものはヘルメット――ではなく、なぜかバスケットボールであった。
「おい、なんだよそのボールは」
 まさかそれを白渚に投げつけ、痛めつけるほどお前は卑怯な野郎じゃないだろうな?
「今から俺は、白渚慶二にバスケの決闘を申し込む!」
 鋭く突きつけられた大瀬崎の人差し指が白渚を貫いた。バスケ? てっきり殴り合いかと思ってたぞ。
「白渚には夕方伝えたとおり、勝ったら負けた奴に一度だけ絶対命令をする権利を得る、それでいいな?」
「もちろん。だから僕はここにいるんだよ」
 気さくな返事をする白渚。大瀬崎が勝ったのなら、今後も大室と仲良くしていくから干渉するな、という命令を白渚にするのだろう。そして、白渚が勝ったらオレたちは追放される格好の道具として用いられるのだろうな。
 しかし……その手段としてバスケをするだと? 確かに大瀬崎の運動神経からいえば優勢だろう。だが、白渚の腕に関しては未知数だ。正々堂々と勝負することにした大瀬崎には感心するが、白渚が元(あるいは現役)バスケ部だったとしたら、いくら大瀬崎でも勝てるかどうか怪しくなる。
 それを知ってか知らずか、大瀬崎は頷いた。
「ルールは二十五得点した方が勝ちってことと一チームの人数は二人ってこと以外は公式ルールに則る。これでいいな?」
 一対一だとほぼ追いかけっこ状態になり、三対三だと大室のいるチームがどうしても不利になるからだろう。白渚もその意味を理解したようで、伊東をチームに加える。
「俺は助っ人として穂枝を起用する!」
「いや、オレは遠慮しておく」
 オレはそう言うことに決めていた。
「な、なんでだよ! お前、寝返ったのかっ!」
 寝返ったって、この状況下、どうやれば白渚の味方になれるんだよ。
「そうじゃない。相手が伊東で味方がオレってのは相手が不利になるだろ?」
「別に統流っちがそっちでもいいよ?」
 独り言のように白渚が呟いた。
 この余裕、どこからやってきている? だが、オレにはもう一つの理由があるから試合に参加したくなかった。だから、理屈に適ったような屁理屈を言った。
「お前がよくても、大瀬崎はそんな卑怯なマネしたくないんじゃないのか?」
 チラ、と大瀬崎を見る。豆鉄砲を食らった鳩のようだったが、すぐに我に返った。
「そ、そうだな。男女ペアなら男女ペアで勝負だ。奏、頼む」
「なんで私が……」
 重そうな腰を上げるが、すぐに腕を伸ばし始める。満更嫌でもなさそうだ。きっと、奏は奏で、白渚の行動に疑問のようなものを抱いているからだ。そうでなかったら、あんな真剣な顔をしない。
 そして、オレたちは苑地の奥(神子元邸方面)にあるコートへ移動した。広場よりもさらに暗い場所で、ボールさえ追える状況じゃなかったが、大瀬崎は何も言わなかったし、他のみんなも同様だった。個々にストレッチやらシュートやらをしてウォーミングアップをすると、両チームはコートの真ん中に整列した。
「いいか、オレはバスケに詳しくないから、審判は互いの判断に任せるからな」
 ジャンプボールのボールを投げる役を任されたオレは、そう一言言った。それは本当のことだったが、審判をやらない理由としては不適切だな。
 そっとボールを夜空へと解き放つ。
 オレは、大室ともう一度話したかったのだ。
 少しだけでいい、一方的に話してしまうことになっても構わない。そのあとで白渚に怒られてもいい。それでも伝えたいことがあった。
 大室の方から白渚を説得できないものかと。
 試合は、ボールが大瀬崎の指先に触れ、一気に動き出した。落下地点に構えていた奏が白渚の脇を潜り抜ける。速攻を仕掛ける気だ。だが、伊東がスリーポイントラインで待ち受ける。奏は立ち止まってしまった。が、伊東の背後に潜んでいた大瀬崎がパスを求めている。ちらとその方向を見た。が、その『ちら』が命取りだった。奏がボールを投げた途端に伊東がそれを阻止したのだ。
「奏は正直者ですね」
 伊東は見えていたというのか? 闇夜の中だというのに……。
 それから伊東がお返しとばかりにコートを駆け抜ける。二人が後ろにいる今、コートは伊東の独壇場だった。ツーポイントエリアを過ぎる。そのままレイアップをすれば確実に入るところまで差し迫った……のだが、伊東は急停止した。そしてスリーポイントラインギリギリの場所に立つ白渚にパスを送る。伊東を追いかけていた二人は予想外の行動に対応できず、白渚のシュートを止めることはできない。無防備の白渚がそっとシュートを放った。入る。
「ナイシュー!」
「ありがとうございます」
 伊東と白渚がハイタッチする。
「まだまだこれからよ」
「おうっ!」
 奏からのボールを大瀬崎は受け取り、試合が再開された。
 三対〇。白渚のロングシュートと伊東のスピードとが相まって大瀬崎と奏はかなりの苦戦を要されることになるだろう。
 オレも観客席に戻るとするか。
 大室の隣に腰掛ける。大室はそわそわと白渚のあとを目で追いかけていた。
「大室は、白渚に勝ってもらいたいのか?」
 前触れなく言ったからか、大室は硬直した。だが、すぐに力を緩めると、首をふるふると『横に』振った。
「……お?」
 大室が首を横に振った? ということは、つまり否定をした、ということを表している。何に対して否定したのか、それは状況から考えるにオレの問いにというのが常識的に正しい。で、オレの問いというのは『白渚に勝ってもらいたいか』というものだ。つまり、それの否定というのは『白渚に勝ってもらいたくない』というわけで、言い換えれば『大瀬崎に勝ってほしい』ということになる。
 大室が、だぞ?
 白渚の彼女である大室が、どうして大瀬崎の勝利を望む?
 もしかしたら、大室はオレたちの知らないところで束縛されているのか? そして、大瀬崎に解放を望んでいるのか?
「白渚が負けるところをみたいのか?」
 遠回しに訊いてみるが、慣れないことはしないものだ。この言い方は少しひどいと思う。つか、遠回しになってないよな。
 ……ふるるっ。首を、今度は全力で横に振った。
 強い否定。じゃあどういうことだ? 大室は白渚に縛られているわけではない? 最悪縛られていても、大室はそれを酷としていない? なのに大瀬崎に勝ってほしいのかよ……。ワケがわからん。
「じゃあどうしたいんだよ」
 投げやりだった。
 どうせ大室は何も言わないんだろうからな。
 この謎も大室の心の中で渦巻いて、それで消え去っていくのだろう。
「……かも」
 さすがにイライラしてくる。大室の無口ぶりには。
 無口ぶりには……。
 ……ん?
 今、オレ以外の誰かの声がしたぞ。しかも、コートの掛け声のような強く鋭いものではない。ずっとやわらかく、あたたかく、そよ風で掻き消えてしまいそうな、小さな小さな声が、隣から聞こえた。
「トベルくんと、一緒にいたいから……かも」
 今度はちゃんと聞こえた。頭の中で何かが弾け飛び、オレはとっさに大室を見た。
 大室はすでにオレを見ていた。
「ケイジくんに負けてほしくないけど、トベルくんと会えなくなっちゃう……と思うから」
 もう一度。
 もう間違いはない。大室が、喋っている。オレ向けて、耳打ちもせずに、オレに喋りかけている!
「そう、か」
 オレは隠しきれない戸惑いを精一杯隠しつつ、相槌を打った。実を言うと、相槌しか打てなかった。言葉が出なかったんだ。
 やりきれずにコートへと視線を逃がした。伊東が大瀬崎のパスをカットをし、そのあとコートをぶった切るように駆け巡る。伊東の守りから攻めへの切り替えといい、重心といい、反射神経といい、他とはずば抜けて優れている。
 それなのに――、
「白渚君、パスです!」
 追いかける大瀬崎をあざむくかのようにバウンドさせて白渚にパスを送る。伊東はなぜかシュートを打たなかった。何度目だろうか、白渚のジャンプショットがゴールの枠にあたり、リバウンドを奏が受け取る。
 どうしてだ? 今のは伊東が打てば確実に入ったのに、どうして白渚にボールを送るんだ? 遠くからのシュートなんて必ず入るわけでもないのに……。
「うらぁ!」
 大瀬崎がレイアップを決める。これで六対六。同点だ。
 さて、こうしている間に、オレと大室の間では会話がないわけだ。でも、もうそれでもいいような気がした。
 話せたんだ。最後の最後で、オレは大室と話すことができたんだから。
「えと……えと、トベルくんは、どう、かも?」
 しかもあの大室は会話を続行させるのだ。つい数十秒前までは一言も口を開かなかった大室が、自らの意志で。
「ど、どっちが勝ってくれるといい……かな?」
 恐るおそる、傷口に触れるように。勇気がいるだろう。オレなら平然と聞けるようなことでも、大室にとっては好きな人に告白をするくらいの勇気が必要なはずだ。
 答えなきゃいけない。なんだか頭が麻痺しているようで、気の利いたことが言えないような感覚がするが、それでもだ。
「オ、オレか? オレもお前の友達をやっていきたいよ。だから、白渚には悪いけど大瀬崎が勝ってほしいな」
 奏がガッツポーズをしている。奏が得点を入れたようだ。
 大室がやわらかく微笑む。
「ともだち……」
 大室が呟いた。ゆっくりとしているが、オレのお袋のような間延びてはいない。癒しの呪文を耳にしているようだった。
「わたしね、ずっとずっとね、ひとりきりだった……と思うの」
 パスだ、シュートだ、という声に吹き飛ばされそうなほどの小声だったが、オレは一言一言を噛み締めるようにして聞いた。
「独りきり? 白渚は?」
「ケイジくんは特別……かも」
 かも、ねえ。
「わたしね、長い間、『ともだち』がいなかった……と思うの」
 大室は夜空を見上げていた。ちりばめられた星屑。星座は詳しくないのでわからないが、輝く星の一つひとつに名前が付けられてるんだろうな……。
「きっと、わたしがなんにも話さなかったから……かも」
 昔のことを思い出すようにして、そう言った。
 大室はよく喋っていた。意外ではあったが、話さないのと口数が少ないのは違うものなのかもしれない。
「だからね、昨日トベルくんが『ともだち』って言ってくれたの、うれしかった……かも」
 昨日……そうだ、大室がゴミを抱えていたあのときだ。言った、確かに言った。だが、何気すぎる。
『これからはオレを頼れよ。友達なんだから』
 こうは言ったが、注目すべきは前の一文だろ?
 気になって仕方がない。まあ、それ以上に気になることがあるワケだが。
「……かも?」
 さっきから不確かな断定ばかりじゃないか。
「う、ううんっ!」
 あわあわと手と首を横に振る大室がたどたどしくて少し笑える。
「うれしかった、とってもうれしかったよ……うん」
 次第にボリュームが絞られていく。でも、嬉しい気持ちはちゃんとあるのはわかった。どうやら言ったことを曖昧にするクセがあるようだ。あまり話し慣れておらず、自信がない表れなのだろうか。ま、特に気にしないようにするかな。
「あの、あのね、『ともだち』って言ってくれたの、トベルくんが二番目……のはず、かも」
「最初は伊東か?」
 ふるふると否定をする。
「中学生の時に知り合った子」
「へえ」
 大室の中学時代か……。白渚と付き合い始めたのが中二だって伊東が言ってたな。
 その伊東のチームが湧く。得点が入ったようだ。どうやら……白渚が二点決めたようだ。
「……トベルくん」
 また大室が話しかけてきた。
 大室って友達には積極的なのな。
「なんだ?」
「その……聞きたい、かな?」
「聞きたい?」
 少し考えてみる。
「最初の友達のことか?」
 ……こくん。正しかったみたいだ。
「そりゃ、言ってくれるんなら聞きたいけど、いいのか?」
 ……こくん。また頷く。
「トベルくんは『ともだち』だもん」
 大室は恥ずかしそうに笑った。いや、嬉しそう、の間違いだな。いつも、こんなきれいな笑顔を白渚に見せてるんだな、大室は。
「えと……あれはね、わたしが中学一年生だった頃のお話……かも」
 大室の話が始まる。


 大室に言わせれば、新しい環境に放られた人間は、出だしにつまずくと孤立してしまうらしい。特に大室のようなおとなしい子だと顕著に見られるのかもしれない。とにかく、大室は入学早々一人でいることが多かった。だが、孤独が好きなわけではなく、いつしか友達というものを作りたい、と思っていた。ただそれだけの勇気がなかっただけで。
 しかし、ついに声をかけることができず、また声をかけられることもなく、友達は一人もできずに夏休みを迎えてしまったのだった。
 そして、友達はそんな寂しい夏休みに出会うことになる。自由研究の材料を買いに行った帰りのことだった。暑さの残る夕方、大室は誰かが道端に倒れてしまっているのを見つけた。
 道端に人? そんなまさか、と普通の人ならまずウソだと疑うだろう。だが、ウソなんかじゃない。現にオレはその経験をしているんだからな。しかも、倒れていた理由が喘息だというのだから、オレの件よりよっぽと信憑性がある。
 喘息といえば今日の昼の光景が目に浮かぶわけだが、大室は当時から喘息を持っていたらしい。しかも頻繁に起こしていたため、スプレー式の吸入剤を携帯していたらしく、倒れていたその子の背中をさすりながら使わせてあげたそうだ。
「でも……その子が大人の人だったら、わたし、怖くて逃げてた……かも」
「へえ。それじゃあそいつは子どもだったのか」
 こくん、と頷く。
 その子は当時の大室とさほど年齢の変わらなさそうな、フリルのワンピースを着た金髪碧眼の女の子であった。
「って、ちょっと待て! 金髪碧眼って、外人さんかよ!」
 こくり、と大室は頷いた。
「とっても日本語がうまくて、きれいで、とってもお上品な子だった……かも」
「あー、そういうことじゃなくてだな……」
 大室の覚えたての英語ではどうすることもできず、徐々にカタコトな日本語を使うようになってしまい、最終的には黙り込んでしまった。
『日本語で大丈夫ですわよ』
 金髪の少女の一言に、大室は大きな安堵と驚愕を抱いたという。当時の大室は、西洋人が日本語を話す姿を想像できなかったのと、少女の日本語があまりにも流暢だったからだ。
 それから、喘息の話で盛り上がったそうだ。珍しい話題かもしれないが、友達が欲しかった大室と、異国の地で一人倒れていた少女にとって、打ち解けるには十分すぎる話題だった。
 それから、転んだときに擦ったのか、黒いワンピースが破れていることに気付いた大室は家に戻って修繕を親に頼んだ。
 その間、色々なお菓子を食べながらたくさんの話をした。何を話したかは忘れてしまったが、とても楽しかったことは思い出に残っている。
 少女の名前はミナトで、苗字は長くて忘れてしまったらしい。だが、ミナトが日本人とドイツ人のクォーターで、この夏に一人だけで祖母の住む日本へやってきたことを教えてくれた。
 なるほど、じゃあ大室の読んでいる本はドイツの本なのかもしれないな。
 ワンピースが直り、その日は別れた。
 それからミナトとよく会うようになった。通っていた小学校。通学路にある公園。図書館。大室の知っている場所を全部案内してあげた。
「ミナちゃんはね、とっても頭がよかったの。わたしの知らない世界をたくさん知ってて、わたしにも教えてくれた……と思うの」
 ミナトの語る話は世界の話だった。とりわけ未来の話で、どれもが新鮮かつ希望に溢れていた。
「未来、ね」
 オレが口を挟む。
「どうしたの……かな?」
「いや、まあ、なんだ。未来の世界の夢を見るんだ。同じ夢ばっか見るんだが、そのミナトって奴ならなんか知ってんのかなって」
 一度会ってみたい。なんてことを思った。
「知ってる……かも」
「え?」
「あっ! なんでもないっ……かも!」
 大きく首を横に振り、話を元に戻す。
 ミナトの話に感動した当時の大室は、ある日の夕食でその話を両親にした。
 すると、両親はそれぞれに言った。
『その子とあまり関わりを持たない方がいいわ』
『へんてこりんな考えがいずみにも染みついてしまったら大変だ!』
 きっと、親はそれを怪しい勧誘か何かと間違えてしまったのだろう。だが、まだ幼い大室はそんなことを理解できるわけもなく、必死に訴え続けた。言えば言うほど親の疑念が深まることも知らずに。
『お母さんもお父さんも信じてくれなかったです……』
 あくる日、大室はミナトも小声で言った。すると、ミナトは平然と答えてくれた。
『別に、誰が信じてほしい、だなんて言ったのかしら? わたくしの言ったお話は、この国特有のありがたき神様が仰せられたお言葉を載せた聖典を丸暗唱すれば救われるような新興宗教ではありませんのよ? そのような文化を否定するわけではありませんが、わたくしは神々の教えではなく事実を述べたまでですわ。信じるも信じないも貴女の勝手ですわよ』
 その言葉はとても自信に満ち溢れていたという。中一前後の女の子がすでに大人の事情、しかも異国の地のを知ってしまっているとはな……。
 ミナトには度々外せない用事があったが、その日以外はほぼ毎日二人で遊んでいた。大室は親に夏休みの宿題のため、というウソ――それが初めてだった――を吐いてまで会っていた。はしゃぎすぎて、ときには二人で喘息になってしまうこともあったが、大室は今まで感じたことのない至福の時であった。
 だが、そんな日々がいつまでも続くことは、なかった。
 ある真夏日のことだった。ミナトが突然喘息を起こし、公園で倒れてしまったのだ。
 すぐさまスプレーを渡すが、何度も使ったために薬はとうに切らしてしまっていた。慌てた大室は公衆電話から救急車を呼ぶことにした。
 背伸びをして受話器を取り、十円を入れる。
 だが、大室は知らなかったのだ。救急車はどこに掛ければやってくるのかを。無理もない。消防署に掛けなくちゃいけないだなんて、知識がなくちゃわかるはずがないだろうしな。電話を諦めて家まで戻り、家事をしている母親に助けを求めようとも思った。けれども、玄関の前で足がすくんでしまった。母親にミナトと遊んでいたことがバレてしまったら怒られる……。その恐怖に震えたのだ。
 どうしようもなく、せめて背中をさすってやるくらいは……と公園へと走った。
 しかし、そこにミナトの姿はなかった。
 誰かが助けてくれた……? いや、誘拐されたのでは……?
 さまざまな思考が頭を巡り、溶かしていく。
 脳内の鍋をかき混ぜていくうちに、カルメ焼きのように膨れ出来上がる後悔の気持ち。
「そのあと、わたしも喘息になった……と思うの」
 懸命に微笑む大室の顔には、今もなおその傷がわかるほどだった。
 それを最後に、ミナトと会うことはなかった。
 いつしか、別れが来る。
 別れがこれほどまで苦しいとは。
 息が詰まるほど、苦しい。
 こんなものはたくさんだ。味わいたくない。
 ならいっそ、友達なんていらない。
 言葉を交わすから、友達ができるんだ。
 それに、わたしは人に物事を伝えることができない。
 ミナトの話を親にしたとき、わかった。
 なら、もう言葉もいらない。
 人と話さない。
 だから、大室は無口になったのだった。
 それから『世界』を知ることができればミナトにもう一度会えるかもしれない。そう思った大室は『世界』を知るためにたくさんの本を読んだ。わからないことばかりだったから、授業も頑張って受けた。世界中の本を読み漁った。だが、どんなに優秀になっても、どんなに幅広い知識を得ようと、ミナトには会えない。だからもっと勉強をする。周り人は『世界』の話を信用してくれないから話さない。何も話さない。両親や先生も例外ではなかった。
 その状態をなんと呼ばれるのか大室は知っていた。
 大室は『孤独』の中を生きていた。
 すでにクラスから一目置かれ、ちょっかいを出されるのならまだしも、大室の場合は畏怖の目で見られてしまっていた。
 大室は寂しかった。本当の孤独の辛さを知ったから。
 誰かとの関わりが欲しい。だがもうそれは手遅れの話で、気付いたら二年生になっていた。大室の噂はもはや学校全体に広がっていた。一生わかり合える人になんて会えないんだ……そう、大室は絶望しかけていた。
「そんなときに、ケイジくんと出会ったの」
 大室が伊東にハイタッチする白渚をそっと見つめた。
「こんなわたしなのに、ケイジくんは気軽に話しかけてくれたの」
 だが、当時の大室はなかなか口を開けなかった。白渚が大室に気があると知っていながら、言葉を発することができなかったのだ。……いや、気があるからこそなのかもしれない。一言でも話したら仲良くなってしまう。仲良くなったら、別れが来てしまう。別れが怖かった。その恐怖に怯えていた。
「でもね、ケイジくん、言ってくれたの」
 それは、東から真赤な陽が顔を見せるように、ヒビ割れた大地に潤いがもたらされるように、大室の表情がふっとやわらかくなった。
「『僕は、大室のことが好きだ。ずっと、ずっとキミと一緒にいる。絶対キミを守ってあげる』って……」
 その告白で、大室は呪縛から解き放たれた。白渚となら、ずっとずっと一緒にいられる。この人なら、心の底から信頼できる、と。こうして二人は付き合い始めたのだった。
「わたしね、ケイジくんのことが好き、なんだと思う。こんなわたしのこと……大切にしてくれるから。たまにわたしばっかしになって見境なくなっちゃうこともあるけど……。でもね、とってもやさしくしてくれるの。あったかくて……」
 大室は胸元を手で覆うようにして囁いた。その手の平にはたくさんの思い出が込められていることだろう。
 ふと、オレの方を向く。
「わたし、トベルくんのことも好きかもっ!」
「なっ!」
 それは突然のことで、どうすればいいのか、何をすればいいのかわからなかった。全身が熱くなり、汗が噴き出る。
「こんなわたしに『ともだち』だって言ってくれたから……。頼ってもいいよって言ってくれたから……かも」
 ああ。
 そうだよな。そりゃそうだよな。もしやとは思ったが、そんなのありえないよな。大室が本当に大好きなのは、白渚だけなんだから。
 白渚は『彼氏』で、オレは『友達』なんだよな。
 ま、それはそれでいいと思うし、オレもそれが一番だと思う。
「でもね……」
 大室は、語りの最後に呟いた。
「わたしね、まだミナちゃんのこと思い出すと、怖くてたまらない……と思うの」
 ちらり、とオレを見つめる。暗くてよく見えないが、少しだけ目が潤んでいるような気がした。
「だから、まだ『ともだち』は一人だけ……かも」
 ははあ、なるほど。
「わたし、臆病だから……」
 だから、オレにミナトの話をしてくれたのか。
「もしかしたら、トベルくんも――」
「オレはいなくなったりしない」
 大室のために、そしてオレ自身のためにもそう決心する。
「ミナトのように、何も言わずに去ることはなんかしない。仮に離れることがあっても、ずっとずっと、オレはお前の友達だ。ミナトがお前に話してくれた話、オレは信じるよ。みんなも信じてくれるさ。だって、オレたちは、大切なお前の、頼れる友達なんだからな」
「あ……」
 漏れ出すような吐息。
 大室の瞼に星のような粒が溜まっていく。
「トベ……くん」
 そして、その粒は静かに滴り落ちた。


 そのとき、オレは何かを見たような気がする。
 一際明るく光る星と星の間――そこから何かがゆっくりと落ちてくる。
 花びらか? いや、違う。もっと大きい。
 それじゃあ木の葉か? いや、そんなに硬いものじゃない。
 あれは……そう、羽根だ。
 白い白い羽根。
 揺り籠に揺られるように、静かにオレの胸元にまで降りてきた。
 それに触れようとした。
 だが、指先が揺れた瞬間、それは細かな粒子となって弾けとんだ。


 ボールの跳ねる音がする。
 そして、歓声が上がる。ふと我に返った。どうやら決着がついたようだ。
 勝ったのは……勝ったのはどっちだ?
「よし!」
「やりましたね!」
 その声は、その声は……。
「キミの素早い動きがあったおかげだよ」
「いいえ、あたしは全部アシストでしたから……」
 勝ったのは、白渚と伊東だった。



第十七話『翁の瞳の奥底に眠る其方』に続く

第十五話に戻る
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『城ヶ崎の小説ども』に戻る。
ども、勉強量ヒヤシンスのじょがぁです。

うちの高校、テストがやけに遅い……。
というわけで、テスト期間中は恒例になってるんですかね?(いや知らんけど)

まあ、つまり、いい感じの動画紹介っす^^

作業用ばかりですが、二つ続けてどうぞ。






同じうp主さんです。ここの主さんはいいセンスをしている……はず。
Air、ひぐらし、うみねこなんかの曲が入ると、思わず曲名を確認してしまいます。注意。
(うみねこの曲なんて知らないのに、ふと何かを感じさせるものがあるんだろうな……)

というわけで、とっとと勉強しやがれこにゃろーですね、自分。
どうも、今日からテスト一週間前です、じょがぁです。

さてさて、もう一ヶ月くらい前になるんですかね?
沼津へ行ってきたときの写真をちょこっと公開しようと思います。


※インスタントカメラで撮った写真をデジカメで撮りなおしているため、全体的に画質が悪くて夕焼けみたいになってます^^;


沼津駅

えー、沼津駅です。
見た目、普通の駅ですが、意外と大きいですよ。
多分、近年急速に発展して、駅前だけが成長して駅舎が追いついてない状態なの……かな?


あにめいとぬまづ

で、沼津にもアニメイトはある、と。念の為。
バス内で撮影。ピンボケしないように頑張った。
なんか、看板下の広告がうまくモザイクがかってますが、
これがインスタントカメラ&デジタルカメラのコンビネーション。
つか、ビール瓶積むようなカゴが置いてあるのは気のせいか?


謎のおぶぢぇ

駅前のバス通り。
なぜか車も人も少ないときに撮影が成功して嬉しいっす。
ってか、これ撮るために横断歩道を途中まで渡って引き返したという……。
風景撮るなら恥を捨てよ、ですね。
ちなみに、この道をずっと行くと海へ行き着きます。


車両止め

そのバス通りの歩道にチラホラ置いてあったオブジェ。
なにこれ?

……ん?


わーお

車両止め、だと?


びゅうお

で、これが日本一デカイという水門の『びゅうお』ちゃんです。
名前と姿存在感とのギャップが大好きです。
びゅうおは上の通路を使って向こう岸まで行くことができます(有料^^;
ちなみに、真ん中のテトリスの細長いブロックを横にしたようなこれで水を堰き止めるんだそうです。
断頭台にも見えてしまうのはなんだ、じょがぁがイカれてるのか?


ないすぼーと

びゅうおからの景色その一。
沼津港と駿河湾を分け隔てる防波堤ですかね?
にしても、Nice boat.


大瀬崎さん

びゅうおからの景色その二。
実際で見ると海がめちゃくちゃきれいなんですけどね……。
昼間に撮影したのに夕方じゃないかっ!
ちなみにここから見える半島の先端が大瀬崎です。光ってて見えないね。
にしても、Nice bo(ry


心で見るんだよ心で

びゅうおからの景色その三。
恐らく前方の山は愛鷹山。お茶栽培で有名。
で、その後ろにデデンと富士山がいるんですが……。
どうしてそこだけ隠したんだ、雲。
(電車からは見えたんですがね……)


茶

実際に山の麓まで行ってきた。
お茶ってたよ、お茶ってた。
ちなみにここから海も見えますが、わかるかなあ……?
しかし、牛臭かったぜ……。


なんとかさん

ここら辺のお茶を頑張って育てた第一人者の像。
名前は……エハラ? エバラ? ヤキニクノタレ?
とにかく、すっごい人。


といれっと公の衆

先程のすっごい人の銅像が建っていた場所にあった公衆トイレ。
じょがぁだって行きたいときは行きたい。


で、その公衆トイレの中にこんな張り紙が貼ってあった。


おーん

つかあた後はきれいに
水を流しましよう



なぜ間違えたし。


最後の『流しましよう』は許せる。

だが、『つかあた』は無いだろっ!

せっかく(じょがぁの数十倍は)字がうまいんだから、『使った』って書いてほしかった……。


いや、待て。


そもそも、文字通り公衆のトイレに明らかな誤字を残したまま貼り付けることがあるだろうか?


それならば、これは何かのメッセージなのではないだろうか?


そうだ、
『つかあた』『使った』の誤字として見るのではなく、
『つか』『あた』と分解してみてはどうだろうか?

『つか』と『あた』に共通する点。


実は、あった。

それはズバリ、長さの単位!


『つか』は漢字で『束』と書き、握り拳一個分の長さを表す。
『あた』は同じく『咫』と書き、手を開いたときの中指の先から親指の先の長さを表す。

どちらも、昔の日本で用いられてきた長さの単位だ。


今はもうどちらも使われておらず、
一部の慣用句として使われている程度の存在となってしまっている。


このように和の文化は数知れず、
それを呑みこまんとする欧米文化の大波。


そう、

おーん


この貼り紙は、
伝統的な日本文化を残していきたいという
切なる希望の塊だったのだーっ!





と叫んだあとトイレから出たら、
トイレ待ちをしていたおじさんに変な眼で見られました。
うえ……。ちょっとヤバいかも……。
って感じのじょがぁですが、皆さんお元気ですか?

まあ、色々とありましたが、
なんとか一昨日らへんに『翼の生えた少女はもういない。』の第一部が上がりました^^

あとはゆくゆくと推敲作業をして、木曜に一話ずつ挙げていこうと思います。


さあ、来週のテストが終わったらいよいよ『のべるげえむ(仮)』の企画を組むぜえい!
今後も調整があると思いますが、四月までにベータ版くらいにはなってほしいものです。

ま、詳しいことは三箇日らへんでってことで。


つーわけで、具合が悪いので早々に退散させてもらいます^^;
ども、ネタがねえ。
あるけど時間がない。
時間がないと言い訳してる自分がおるのじゃ。
フォッフォッフォのじょがぁです。

なんだかんだで第一部ラストを執筆中です。
ラスト前の話辺りから失速傾向がみられております。
ま、ここら辺はあんまし深いところまで考えてなかったからなあ……。

それと、久しぶりに詩のようなものを書いています。きっとそのうち後悔しても公開します。
自信を持って詩を書いていた『ハルサク!』時代が懐かしいなあ……。

『おひさま ぽかぽか おはながさきました』

みたいな、純粋な詩をもう書けなくなってしまったぜ……。
(さすがにこれは直球すぎだがな)


詩は短い分小説以上に表現力と語彙力が必要になるからなんだろうけど。
とにかく、気分が乗ってないときに書こうとしても無理な話ですよね。
今日は久々に気分が乗ったんですが、三十分しない間にしぼんでしまったんですがね。

あー、うちが巧舟先生だったらウィスキーでも呑んでるんだろうなあ……。
ども、じょがぁです。
翼の生えた少女はもういない。』第十五話、無事上がりました。
是非とも楽しんでいってくださいな。

それで、なんですが、本編には関係のない話になりますが、
訳あって投稿屋にて公開中の『翼の生えた少女~続~』の一部を修正しました。

第二十一話の『悟り~そうやって思うことは難しいか?~』です。

まあ、きっと気付かないと思いますが、駿河の姉さんの年齢です。三歳程度若くなりました^^;

ってなわけで、いよいよ執筆もラストスパートです。いぇいいぇいいぇーい!

 これは夢なのか? それにしては、やけに身体が重く感じられる。でも、きっとこれは夢だ。辺りを見渡す。オレ以外の誰もいない。それどころか、オレ以外の存在を感じられなかった。生き物も景色もない。灰色の何かの中を彷徨っていた。すぐそばに誰がいようとも、その温とい存在に気付くことなく通り過ぎてしまう。
「えへへ、統流君っ!」
 その明るい声がしなければ、オレはこの世界の塵になり果てていただろう。
 焦点を近づけるようにして前を見つめる。徐々にその姿が浮かび上がってきた。
 これは夢なのか? それにしては、やけに身体が重く感じられる。もしこれが現実だったのなら、すぐにでも新たに現れた目の前の存在を抱きしめていたことだろう。
「ソフィア……?」
 そこに、翼の生えた少女がいた。
 白く大きな翼をはためかし、飾り気のない笑顔で応えてくれる。
 現実ではない。わかっているはずだ。わかっているはずなのに、オレは少女の手を取っていた。
 ……温かな感触。覚えがあった。
 本物の、ソフィアだ。
 夢だということを疑うくらい、お前が間近にいた。
「どうしたんだよ。帰ったんじゃないのか?」
 何ヶ月振りだろうか。いや、もう何年も話していないような気がした。本当はもっと喜び合いたかった。挨拶を省いてでもあれからの経緯を話したかった。でも、オレはそっけない態度をとってしまった。
「ずっと統流君と会えなかったんだもん。すっごく心配だったんだよ?」
 オレは今、どんな表情をしているのだろうか? 喜びを表しているか、嬉しさを表しているか、いや、怒りか、悲しみか、憎悪か苦痛か? とにかくありとあらゆる感情が空気を灰色に染めているような気がした。
「ちょっと、気になることがあって」
 ソフィアの顔が少しだけ曇る。そんな顔してほしくない。でもそうさせたのは紛れもないオレなのだ。知らぬ間にソフィアを傷付けている。
「統流君、悲しそうにしてるんだもん。心配しちゃうよ、私」
「悲しくなんてねえよ。楽しく毎日を送ってる」
 ウソを言った。これ以上ソフィアに心配をかけさせないよう、できるだけきれいな笑顔をしてみせた。
「楽しそうだけど……でもやっぱり、統流君どこかで悲しそうにしてるよ」
 見透かされていた。こういうことに敏感なのは変わらないんだな。いや、ほんの数ヶ月で変わるワケないか。
 そうだ、悲しいさ。
 お前を未来へ送る。オレたちで決めたことだ。それが一番いい方法なんだと、そう信じて。でも、どこかで不安を感じていて、もしソフィアがオレたちの世界にいたとしたら……なんて考えている。
 勝手だよな、オレ。
「ごめんな」
「ど、どうして統流君が謝るの?」
 とんでもない、とソフィアはあわあわと両手を振った。それに伴い翼も揺れる。仕草の一つひとつが昔と変わっていない。
「もう、ダメだよ統流君! 落ち込んでちゃ!」
 ソフィアはそう言うが、どうしても後悔の念は消えない。今のオレじゃあ、こうして再開しただけでソフィアに負担をかけさせてしまっている。再開しようとソフィアが思ってしまったことも……。
「わかってるさ。でも、怖いんだよ。なんて言やいいんだろ……ダメだ。うまく説明できねえよ」
 ソフィアが未来へ旅立ってしまったあの瞬間から、いや実際はソフィアに感情を抱いてしまったあの一瞬から、オレはずっとこの気持ちにさいなまれてきた。
 この灰色の世界に時が存在するのかは定かでないが、時は淡々と過ぎてゆく。ソフィアは何かを静かに決断したように、ゆっくりと頷き、そしてオレを見つめなおした。透き通った瞳から、貫かれた決意を感じられる。
「統流君、いいこと、教えてあげよっか?」
「いいこと?」
 ソフィアはにっこりと笑って頷いた。
「うん! 統流君のいいところを教えてあげる!」
 オレのいいところ?
 そんなもの、あるのだろうか? こんなオレに。お前を不安にさせてしまうオレなんかに。
「やさしいところ」
 ゆっくりと、静かにソフィアは言った。まるで、ピアノの旋律のように。
「だから、私のことずっと気にかけてくれるんだよね? どこにいるんだろう、何してるんだろうって、いつも思ってるんだよね? ここからでも知ってたよ、統流君の気持ち。とっても嬉しかった」
 無垢な笑顔で語りかけるソフィア。お前と一緒にいたい。一緒にいればもっと嬉しくさせてやれるのに。
「だから……」
 ソフィアは翼を大きく広げた。
「そのやさしさを、たくさんの人に分け与えてくれるといいなっ! 統流君のやさしさ、私だけじゃもったいないもん。統流君なら、たくさんの人を幸せにできるはずだもん!」
 オレが、みんなを?
「あ、ダメだよ統流君っ! もっと自信を持たなくちゃ!」
 顔に出てしまっていたのか、はたまた意志が筒抜けなのか、ムッとしたソフィアに励まされた。
「統流君なら大丈夫。私が向こうの世界に変えることができたのも統流君のおかげだもん。統流君なら、なんだってできるよ!」
 ソフィアのガッツポーズは、率直な想いの表れだろう。正直言って、自信なんてものはない。
 でも、ソフィアに言われたのだから……。
「やってみる。できるところまで、きっとな」
 弱気な決意だったが、それでもソフィアは大きく頷いてくれた。
「うん! 統流君ならできるよ! 統流君なら、きっとどんな奇跡だって起こせるもん!」
「はは、本当に起こせたらいいな」
 オレは笑っていた。あんなに不安だったのに、ソフィアに勇気づけられていた。
 奇跡、か。
 ソフィアと出会えたこと自体奇跡なのだから、もしかしたらマジで起きるのかもしれないな。
 ソフィアの羽根がひらりと舞い降りた。
「あっ!」
 突然の大声に耳が痛くなる。周囲の空間が揺れた。
「どうしたんだよ」
「あ、えと……その、そろそろ統流君起きなくちゃいけないんじゃないかなって」
「は?」
 起きる? そう思って辺りを見渡した。
 壁に取り付けてあった時計が目に入った。
 そうか。
 起きなくちゃいけないのか……。
 むくりと起き上がり、立ち上がる。
 日差しが眩しかった。


四月十五日(火)


 目覚めがいい朝は早くに学校へ来てしまう。
 それはアパートでの時間が暇で暇で仕方ないからで、日課になっているわけではない。
 まあ、朝早くから登校するのが日課になってる奴がオレのクラスにいるんだがな。
 教室に入ると、相変わらず大室は読書をしていた。こいつが教室にいるときは、決まって読書をしているか勉強しているかのどちらかだ。
 教室にはオレたちしかいない。一緒に登校しているというのなら、白渚も学校にいるのだろう。ここにはいないみたいだが。
 以前にも同じようなシチュエーションを見たことがある。あれは確か、初めて白渚にあった日だった。ずいぶん昔の話のように思える。
 あの時の大室は、物音がしただけで隠れてしまうほどだった。
 今はどうだろうか? まあ、根本はおそらく変わらないのだろうが。
 挨拶くらい、しとくか?
 そうだな、しておこう。
 黒板の前を歩き、大室の席で立ち止まる。
「よう」
 それだけの挨拶だったが、大室はびくっと肩を硬直し、反射的にオレを見た。そして、小さく会釈した。
「逃げないのな」
 こくり。大室は頷いた。
 また教卓まで逃げるのかと思ったが、本を閉じただけで終わっていた。
「でも、なんか悪いな。ずっとお前を怖がらせてばかりで」
 ふるふる。大室は首を横に振った。
「オレだけじゃなくて、大瀬崎のバカも、お前を怖がらせてばかりだよな」
 ふるふる。大室は首を横に振った。
 怖がらせているはずだ。でなければ目に涙を浮かべることもなかろう。
「大瀬崎はな、お前をいじめるために暴走してるんじゃない。もしそうだったらオレが殴ってる。わかってくれるか?」
 こくん。大室は頷いた。
「アイツはな、お前と少しでも仲良くなりたいがためにバカやってるんだ。ブレーキがサラダ油だから制御できないんだけどな」
 ……。大室は静かにオレの言葉に耳を傾けていた。
「だから、もしよかったらあいつのこと、嫌わないでやってくれるか?」
 ……こくん。しばらくして、大室は頷いた。
「そうか。ずっと言いたかったことだったんだ。わりいな、読書の邪魔して」
 それじゃあ、とオレは自分の席へ向かう。カバンを置き、ぼんやりと外を眺める。こんな日々でいい。こんな日々が続いていけば、きっと楽しい毎日として思い出になるだろう。
 ――ありがとう、かも。
 前の方から、囁きに近い呟きが聞こえたような気がした。
 まだクラスメイトは来ていない。いるのは、オレと大室だけだ。でも、驚きはしない。仮に幻聴だとしてもいい。少しだけ心が温まった。
 だが、一つ気になることがある。
 ……かもって、なんだよ。


「待ってました! いずみちゃんのお弁当!」
 屋上での昼食が久しぶりに思える。最近雨続きだったからな。こうも見事に晴れてくれると、気分まで晴れやかになる。それはオレだけでなく、大室の弁当を見て涎を垂らす大瀬崎や、紙コップを用意する奏、お茶を注ぐ伊東などなど、どの顔も眩しいくらいに明るい。
「あ、あの、穂枝君、お茶を」
 ソバカスだらけの頬を赤くした伊東の淹れてくれたお茶を貰う。これを飲めば、心の中までぽかぽかと温かくなりそうだった。
「吉佐美、何へらついてんのよ」
 奏に指摘され、伊東は思わず顔をまさぐっていた。
「冗談よ」
「も、もう……」
 溜息を吐く奏に、伊東の顔が発火したかのように真っ赤になった。
 二人はもうすっかり仲良しになったんだな……。この一週間、充実した日々を送ってたんだな。
「これが……これが、いずみちゃんのマーボーナス……はぁ、はぁ……」
 そして、こちらには一週間たってもなお変わらない野蛮人がいらっしゃった。
 相変わらず大瀬崎は大室へのアプローチをやめることはしていないし、大室は大瀬崎に対してびくびくしている。
 それを見せてしまったことが、白渚に見せてしまったことが、きっとオレが進むべき道を切り開いてくれたんだと思う。
 だが、最初の道は、ひどくデコボコした、荒地のような道であった。
「……てくれ」
 初めの白渚の呟きには、オレを含めて誰もが気付くことはなかった。相変わらず大瀬崎はふざけていたし、オレはその大瀬崎を見ていたし、大室は怯えていた。奏と伊東に至っては、二人で話し合っているのだから。
「いい加減にしてくれっ!」
 その怒鳴り声に、白渚以外の全ては止まった。白渚は立ち上がり、箸を投げ捨てた。
 そして、大瀬崎のはだけた胸倉を掴む。
「なんだよ」
 大瀬崎はいたって冷静な口調だったが、いつもより声の調子を下げ、まるで本物の不良のように見えた。
「もう、いずみに手を出さないんじゃないのか?」
 空気が淀む。重い空気、というよりかむしろ息がしづらくなる空気だ。
「んな覚えはねえよ」
 大瀬崎の一言に、白渚は微笑んだような無表情の顔でオレを睨んだ。座っているにもかかわらず、足がすくむほどの迫力があった。
「俺はいずみちゃんと仲良しになりたいだけだ。それだけでどうして怒るんだよ」
 大瀬崎が続けると、睨んだ顔を大瀬崎に戻した。
「仲良しになりたい? 冗談もほどほどにしてくれ。あれのどこに仲良くなりたい気持ちがこもってるんだい? ただ僕のいずみにちょっかい出してるだけじゃないか」
「ちょっかいじゃねえよ! どう見たってコミュニケーションの一環だろうが」
「コミュニケーション?」
 白渚が鼻で笑う。
「笑わせるね。あれがコミュニケーション。へえ、そりゃあどんなひどいことしてもコミュニケーションで片付けられちゃうわけだ」
「勝手に片付けんな!」
「どうしてだい? ゴミ同然じゃないのかい? そんな腐ったゴミはとっとと捨てないといけないじゃないか。ねえ、僕のいずみに何の恨みがあるのさ?」
「恨みがあったら、どうすんだよ」
 大瀬崎の嘲笑のお返しとばかりに白渚の拳が飛んだ。それは大瀬崎の左肩を直撃する。
「――って、んめぇ……!」
 舌打ちをした大瀬崎が白渚を突き飛ばし、バランスを崩した白渚に殺気じみたオーラを発しながら突進する。
 いかん、ここで止めなかったら大瀬崎の暴走は止まらなくなる。オレはすんでのところで大瀬崎を羽交い締めにした。
「離せ穂枝ぁっ!」
「奏、伊東! 白渚の方を頼む!」
 声にならない声を上げる大瀬崎を無視し、白渚も二人に取り押さえられる。白渚はほとんど抵抗することなく、ただ肩を上下させながら不敵に笑っていた。
「これで――決定だね」
 荒い息使いのまま、白渚が叫ぶ。
「いずみを――隔離させよう――君『たち』から――ね」
 君たち……。つまりオレも同罪、ってことか。
「ふざけんな! お前から仕掛けてきたんだろうがっ!」
 大瀬崎が腕の中でまた暴れまわる。こんなに力が強いとは思いもしなかった。腕がもげそうになるが、皮一枚でも繋がっている限り、絶対に離すもんか。
「よく、言えるね――。確かに僕は――君を殴ったよ。でもね、これでも――我慢していたほうなんだよ? いずみに――」
 白渚は途中で言葉をつぐんだ。
「ねえ、二人とも、離してくれないかな?」
 白渚が穏やかな口調で抑える二人に投げかけた。
「嫌よ」
 奏は動じず、むしろ白渚の腕を掴む力を強めた。
「いいから、早く離してくれ」
「嫌」
 奏が否定を続けていると、伊東は自ら抑える白渚の腕を離した。
「奏も、離して、あげて、ください」
「え――」
 伊東の顔は涙でぐしょぬれだった。
「けほっ、けほっ」
 騒然とした屋上で、小さな咳の音がした。
 それは風のさわめきのようにささやかなもので、意識していなかったら聞き逃してしまいそうなほどのものだった。
「あ……」
 大室が倒れていた。苦しそうにまぶたを強く閉じ、膝を激しく上下する胸に合わせるようにして背中を丸めている。
 思わぬ出来事に奏の腕を握りしめる力が緩んでいく。白渚が腕を振りほどく。
 ひゅー、ひゅー。
 そして、白渚はその寒気がするような高音の鳴るほうへと歩を進めた。
「いずみ、大丈夫?」
 大室の背中をやさしくさする白渚の声は、あくまで平静を装っているものだった。先程の勢いは感じられない。
 ぜぇ、ぜぇ……。
 大室は喘ぐような息で答えた。
「しまったなあ、スプレーを忘れてきちゃったよ……よし」
 白渚は躊躇せず大室をお姫様抱っこする。その動作は実に手早く、美しいとさえ思えた。
 だが、オレと大瀬崎に向けられた視線は、悪魔のように冷たいものだった。
「決定、だね」
 吐き捨てるような台詞は、オレには「さようなら」と聞こえた。
 取り残されたオレたちは、ただただ呆然としている他なかった。
 大室に何が起こった?
 白渚は大室を連れて、どこへ行った?
 そもそも、どうしてこうなった?
 オレが眠っている間に周囲は焼け野原になっていたような気分だ。
「……喘息、なんです」
 嗚咽交じりに伊東が言った。
「それより、それより隔離ってなんですか! 穂枝君、どうなっちゃうんですか!」
 それは悲鳴のようだった。心が痛む。何かが風に吹かれ、崩れていく気持ちがする。
 伊東への答えは用意されている。
 今まで見てきた白渚、固い決意……。白渚は必ずそれを成すだろう。
「きっと……オレはお前らと一緒に飯を食うことができなくなる」
「嘘です! そんなの嘘に決まってます! どうして、どうして……ですか」
 そんなに泣き喚かれても困る。オレにはどうしようもないのだから。
「伊東、これは白渚が決めたんだ。オレが言ったところで、もう――」
「行きなさい」
 か、奏……?
「いいから行きなさい。慶二を探して、説得しなさい」
「だから――」
「会うまで私の視界に入らないで!」
 一撃の叱咤でオレは息を詰まらせた。伊東の嗚咽さえもやみ、耐えきれなくなった奏が苦しそうに眼を背けた。
「私の友達を……これ以上悲しませないで」
 やけに心に残る一言だった。オレと目を合わせてくれない瞳が沈んだ鈍い色をしている。伊東をふと見た。顔を手で覆い、膝を曲げて座り込んでいた。大瀬崎は……拳を握りしめたまま沈黙を守っている。
 オレしかいない。誰もそんなことを言ってないが、そう言われている気がした。
「わかった」
 そうとなれば、頷く時間ももったいない。オレは駆け出し、校舎の入口へと駆け出した。


 探し続けた。廊下から、食堂から、購買から、全ての教室から、白渚の陰を。だが、こんなにも懸命になっているにもかかわらず白渚の姿は見当たらない。どこ行ったんだ、くそ……!
 昇降口から、踊り場から、トイレから――。
 そして、ついに見つけた。
 保健室の、前に、いた。
「やあ、統流っち」
 白渚が気さくに挨拶してきた。
「いずみんは保健室にいるよ。でも、残念ながら今は診察中で男子禁制だから、統流っちも入れないんだよね」
「どうして……」
 走りつかれたせいか、オレは何も考えられない。
「どうして、そんな気楽な事を言える?」
 ただ浮かんだ言葉を述べる。
「え? だって今、いずみんいないからさ」
「大室が、いなかったら、いいのかよ」
「うん」
 白渚に苛立ちを覚える。
「僕としては、君たちと仲良くしていきたいからね」
「ふざけてる」
 そう思ったから、そのまま口に出す。
「お前の言ってることは、間違ってる」
「合ってるよ。僕はいずみを守ることが義務なんだから」
「ゴミ捨てを押しつけられて、それから走って転んで、鼻真っ赤にして、それで守ってるつもりなのかよ……」
「何を言ってるんだい?」
 もう、後戻りはしない。
「お前一人じゃ、大室を守りとおすことなんて不可能だ」
 言ったことに、ぐずぐず後悔するつもりはない。
「やってみせる。僕はいずみをずっと守り続ける『決意』があるんだ。いずみのこと何も知らない君に何ができる?」
 そして、訂正するつもりも、ない。
「困った大室を助けるくらいならできる」
「……やれやれ、キミは理解してないよ。本当の『決意』が何かを、ね」
「ああ、そうだろうな。お前の言うとおりだ。オレはそんなもん理解できねえよ」
 もう……突っ走るだけだ。
「そんな間違った『決意』なんて、理解できるわけねえじゃねえか!」
 肩に心臓があるように、肩筋が脈打っている。足の力を緩めたら即行倒れるな、オレ。
「僕にとっては、それが正しい『決意』なんだよ、穂枝君」
 白渚は笑った。
 本当に、本当に白渚の笑顔は言葉が出なくなるほど爽やかだった。
 このとき白渚の顔面を殴りつけなかっただけ、よく耐えたほうだろう。
 あとで壁を殴りつけ、自身を傷付けるだけで済んだのだから。
 どことなくギスギスとした空気は、オレや白渚だけでなく、みんなをも覆い尽くそうとしている。


「穂枝、今日バイトあるんだよな?」
 放課後、カバンの整理をしていたら大瀬崎に声をかけられる。いつものような冷やかし染みた声ではなく、もっと暗く、色で言うのならばグレーに近い青色のような声だった。
「ああ」
 一言で済ます。面倒なわけではない。
「いつ終わる?」
 急かすように短く訊いてくる。
「そうだな、早くて八時、だな」
「八時半」
 大瀬崎は呟く。
「今日の八時半、水の苑地で慶二と決着をつける。最後の『田舎来い』だ」
 その言葉は中二病丸出しの恥ずかしいセリフだったのだが、口調が笑わせてくれなかった。
 本気だ。こいつ、本気で抗うつもりだ。
 抗うって、何をするつもりなんだよ。
 このまま、オレたちは崩れてちまうのかよ……!



第十六話『Die Welten die Vergangenheit』に続く

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